最短時間でホップをブルワリーに
8月6日(火)、横浜産ホップ収穫のために、古川原農園の古川原琢さん、芹田果樹園の芹田賢治さん、横浜ビール・JA横浜の社員・職員と応援者を含む 18人が古川原農園に集合しました。通常なら比較的涼しい午前中にホップ摘みを行うものの、開始時間は正午。気温がうなぎのぼりになる時間に集合した理由はただ1つ、摘みたての生ホップを最短時間でビール釜に投入し、フレッシュホップビールを醸造するためです。というのも、生ホップは収穫後に時間が経つにつれて、熱や酸素の影響を受け劣化してしまいます。そこで、醸造の過程でホップを投入する時間を逆算し、その投入時間に合わせたホップ収穫とビールの醸造を同時進行で行ったのでした。
まるでホットヨガ状態
まず 、今年初めてホップを栽培した芹田果樹園の「カスケード」から収穫開始。見渡す限り、鈴なりに実っていますが、高所に集中しているため、梯子に登っての作業となりました。ここでの収穫目標は2kg。この日の最高気温は34.6度、照りつける強い日差しにも負けず、黙々と収穫を行い、カゴの中は毬花でいっぱいになりましたが、軽いためなかなか2kgに至りません。すると、我々の玉のような汗を見て、「農作業をしているとホットヨガ並みに汗が出ますよ」と古川原農園の古川原さんが笑顔で話してくれました。ホットヨガというと聞こえは良いですが、毎日この猛暑の中、作業を行っている農家の皆さんには頭が下がる思いです。
汗を大量にかいてもなぜか爽快
農園が高台にあるためか、時折爽やかな風が吹いています。交代で休憩を挟みながら、遂に目標の2kgを達成!ところが喜ぶのはまだ早い。そこから目と鼻の先にある古川原農園に移動し、更にもう2kgの収穫が待ち受けていたのでした。収穫3年目となる同農園のホップは、毬花が大きく育ち、香りも強く感じられました。昨年から工夫や改善した点を古川原さんに伺ったところ、蔓下げを行なったことと、施肥のタイミングを改善したこと。また様々なホップに関する 資料を熟読し、土壌の改良にも取り組んだそう。それでも古川原さんは現状に満足せず、「更に香りの良いホップを育て、お客さまに届けたい」と話してくれました。
昨年は、2kgのカスケードを使用して株式会社横浜ビールで「ヨコハマIPA」を醸造しました。今年は更にホップ増し増しにしたビールを造りたいと考え、圃場を拡大。当初4kgの目標でしたが、最終的には6kg収穫することができました。ほっとしたのも束の間、ホップは熱に弱いため、すぐさま氷で冷やしたクーラーボックスに入れ、車で横浜ビールのブルワリーに輸送。そこでは「ホップの手揉み作業」があるため、参加者も移動しました。
ホップの手揉み作業とは?
横浜ビールのブルワリーに到着後、参加者の皆さんは、ブルワリー内に入りホップの手揉み作業を開始しました。ホップの花弁の根元には「ルプリン」と呼ばれるカプセル状の黄色い樹脂がついています。手揉みをする理由は、このルプリンを指でよく揉んでカプセルを破壊することで、ルプリンが内包するホップの香りと苦味を効率よく取り込むため。6kgもあるとなかなか終わりが見えませんが、この作業が美味しいビールにつながるということを聞き、一つひとつ丁寧に作業を行いました。そして、遂にビール釜にフレッシュホップを投入!本日の作業は全て終了です。
横浜ビールでカンパイ
労働の後のビールは本当に美味しい!併設されている直営レストラン「横浜 ビール 驛の食卓」(横浜本店)でお待ちかねのカンパイです。皆さん疲れを感じさせず、次々と出されるビールと料理に舌鼓を打ちました。その中でも特に話題になったのが、古川原さんが育てたフレッシュホップを使用した「ブーシェル」特製のホップ入りソーセージです。カスケードホップの柑橘系の爽やかな香りとジューシーなお肉のハーモニーが堪りません! 「ブーシェル」は、横浜ビールに自家製ソーセージとハムを提供している横浜のビアバーです。
待ち焦がれるフレッシュホップビールの完成は?
本日醸造したビールは、「ヨコハマIPA」として9月18日(水)から発売予定。毎年好評で昨年は数週間で完売したそう。また、直営店の「驛の食卓」では、「ブーシェル」特製のホップソーセージも提供予定です。この時期しか味わえない、フレッシュホップビールとホップ入りソーセージのペアリングを是非ご賞味ください。
地域農業の振興に役立ちたい
2016年からホップ栽培を始めた古川原農園は、元々は主に露地野菜と花を栽培していましたが、地域農業に人々の関心が集まることを願い、横浜産ホップを育て始めました。その想いが叶い、神奈川の農家なら誰もが憧れるテレビ番組『かながわ旬菜ナビ」』に出演が決定。この日は、その収録も予定されていたため、古川原さんは大忙し!「番組を通して、地域の方に横浜産ホップの存在を知ってもらい、喜んでもらえるならこんなに嬉しいことはない」と語ってくれました。
2013年に新規で農業を始めた古川原さんは、既存の農家の視点とは異なる角度から新しい挑戦を行ってきました。ホップ栽培もそのうちの1つ。苦労しながらも、少しずつ周囲との距離を縮め、地域の農業を盛り上げていくための輪が広がっています。今回のテレビ出演は、地域農業の発展を目指すJA横浜との共同企画で実現した話で、これを機に益々横浜の農業に光が当たることが期待されます。