クラフトビールメーカー最大手であるヤッホーブルーイングがホップの生育をスタートしたのは2016年。今年2018年で3年目となる畑に6月上旬に訪問し、担当の株式会社ヤッホーブルーイング軽井沢Cheers(軽井沢営業ユニット)の宮越裕介(ながれ)さんに話を伺った。
昨年のホップ収穫は約10㎏。小さくも未来へ繋がる大きな一歩
2016年から地元企業の株式会社グリーンフィールドとともにホップ栽培へのチャレンジを進めていたが、自社栽培のスタートは試行錯誤の連続だった。
「2016年春にビールの製造過程で排出されるモルト粕を肥料にして畑を耕し、ビニールハウスのような形状の棚を立てました。そこにカスケードと一部ソラチエースのホップ苗を植えました」
日常の業務もあり、日頃のメンテナンスはグリーンフィールドのサポートが主ではあったが、2年目となる昨年の収穫時はその日参加可能な社員が畑に集合し、みんなで手分けして作業した。
「みんなほとんど初めてのことだったので、やり始めると意外と手間取り、こりゃ終わらないと醸造所に蔓を持ち帰って手摘みするなど、なかなか大変でした!」
ヤッホーブルーイングは『よなよなエール』を始めとする全国で販売するビールラインナップの他に、地元軽井沢に根付いたビールとして「軽井沢高原ビール」を軽井沢周辺で限定販売している。初の収穫ホップは『軽井沢高原ビール FRESH HOP ALE』のアロマホップに使用した。
「とはいえ収穫したホップの量はわずかだったので、軽井沢産や国産ホップなどを足しての醸造でした。でも、会社としては小さいけれど大きな一歩になりました」
このビールは同年9月に開催されたイベント「フレッシュホップフェスト2017」で提供された他、10月軽井沢・プリンスショッピングプラザ主催のイベント「ハッピーハロウィンフェア」、また、1公式ビアバル「YONA YONA BEER WORKS」全店にて数量限定で販売した。
今年はグレードアップ!ホップ棚を増設!
前年の手応えから、2018年は長期的に使用出来るホップ棚に変更を決定。サポートのグリーンフィールドには30〜40年前にホップの作付けに携わっていた方がおり、その方々の経験をもとにホップが伸びやかに育つよう大きく組みあげた。
今年はホップを全てカスケードに変更。6月の訪問時点では、今年の収穫目標は前年の3倍の30㎏だったが、7月下旬現在では生育状況は予想よりは遅れ気味に。
「今年は稀にみる猛暑の夏ですが、それが影響しているかどうかはわかりません。でも、棚を大きくしたことで苗も植え替えたため、今年はまだホップの根がまだ十分に根付いていないことが生育遅れの主な要因かと思います。でもまだ小さいですが、毬花が出始めました」(7月下旬現在)
そしていよいよ、今年は8月28日(火)に収穫作業が決定し、社員が集まり手摘みで収穫する。
テロワールビールもまもなく?畑が生むビールも視野に
「来年こそは、ここで収穫したホップ100%のビールをお届けしたいと思います」と宮越さん。
ホップ畑のある一帯はグリーンフィールドが様々な作物を栽培しており、特に注目したいのは隣で栽培する小麦「ゆめかおり」。軽井沢高原ビールでは、小麦を使ったビアスタイルもリリースしており、まさに同じ畑から育つホップと小麦を使って醸造するビールがいずれ実現する日も近い。
訪れた日はあいにくの雨で雲が垂れ込めて拝むことができなかったが、晴れた日には浅間山を望む素晴らしいロケーション。そして、インタビュー中も近くの森からはウグイスの美しい鳴き声が響き続けていた。そんな心洗われるような景色と空気に包まれたホップたちは、さらにすくすくと育つだろうと実感した。
「いずれ環境が整ったら、お客様にもお手伝いしていただき、収穫イベントも開催したいですね」と宮越さん。この素晴らしい環境で、ビールのある楽しさをいつもお客様と分かち合うヤッホーブルーイングのホップ収穫体験はさぞかし楽しいものになるだろう。その時を心待ちにしたい。
ヤッホーブルーイングのホップ生産データ
所在地:長野県軽井沢町
管理者:株式会社グリーンフィールド(JA佐久浅間の子会社)
栽培面積:非公開
栽培品種:カスケード (2017年までは一部ソラチエース)
栽培年数:3年目
予想収量:30㎏目標