今年収穫した日本産ホップでつくったビールを楽しむお祭り

202091(火)1130(月) また来年乾杯しましょう!

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ホップサミット2019春 開催【前半】

ビアジャーナリスト /国内旅行業務取扱責任者 シマダアキコ

ビアジャーナリスト HOP SAIJO

2019年3月8日(金)、山梨県北杜市にある宇宙カンパニー合同会社のうちゅうブルーイングで、「ホップサミット2019春」が開催されました。当初の予想を上回る約60名のホップグロワー、ビールブルワーが全国各地から集結しました。

当日のコンテンツは以下の通りです。

  • ホップサミット2019春 開会
  • 前半

  • 2019日本のホップ事情:スプリングバレーブルワリー株式会社 田山智広氏
  • うちゅうブルーイング活動報告:宇宙カンパニー合同会社 代表 楠瀬正紘氏
  • ホップ農家小林氏活動報告:ホップ農家 小林吉倫氏
  • 農業法人“BEER EXPERIENCE”活動報告:BEER EXPERIENCE株式会社 浅井隆平氏
  • 後半

  • キリン村上博士によるホップ講座:キリン株式会社 村上敦司氏
  • アメリカ横断視察報告:宇宙カンパニー合同会社 鈴木ルミコ氏
  • ホップ生産者グループディスカッション:座長 スプリングバレーブルワリー株式会社 田山智広氏
  • 閉会挨拶:一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会 代表 藤原ヒロユキ氏

午後の「ホップサミット2019春」の開会に先立ち、午前中にホップ農家の小林吉倫氏の圃場と、宇宙カンパニー合同会社のうちゅうブルーイングの圃場・ブルワリー視察が行われました。

最初の訪問先は、山梨県北杜市高根町でホップ栽培を行っているホップ農家の小林氏の圃場です。小林氏が参加者を案内し、国内品種第一号のホップ「カイコガネ」の栽培に至った経緯や、どのように圃場を建設していったのかについて説明いただきました。参加者からは次々に質問が飛び交い、キリン株式会社農学博士の村上氏や京都与謝野ホップ生産者組合の好地氏も解説に加わるなど、有意義な情報交換が行われました。

その後、うちゅうブルーイングへ移動し、圃場を視察しました。うちゅうブルーイングでは、サステナブル(持続可能)なブルワリー、「サステナブルワリー」(造語)を目指しており、ビール醸造後に出た麦芽カスを畑一面に撒き養分として再利用し廃棄物を有機的に循環させています。発酵が進んだ独特の香りが辺り一面に漂う中、参加者の皆さんは、富士山、八ケ岳、南アルプス連峰の雄大な自然とこの独特の香りを満喫していました。

いよいよ「ホップサミット2019春」が開会です。最初に、スプリングバレーブルワリー株式会社の田山智広氏より、「関係する皆さんのご尽力のおかげで、いいプログラムになっていると思いますので、何か1つでも2つでも持ち帰ってお役に立っていただければと思います」と挨拶がありました。

うちゅうブルーイング活動報告:宇宙カンパニー合同会社 代表 楠瀬正紘氏

宇宙カンパニー合同会社は、隊長こと楠瀬正紘氏がビールの醸造を担当し、クリエイティブディレクターの鈴木ルミコ氏がブランディングやアートディレクション等を行っています。お二人がクラフトビールに出会ったのは2016年のこと。それ以前は「宇宙農民」という名前で農薬や化学肥料を使用しないお米や野菜などを栽培し直販していました。

山梨県北杜市高根町は移住者による有機農業が広く行われています。みんなで一緒にできることはないかと、オーガニックマーケットやマルシェを開催。これらの取り組みをさらに発展させるために、アメリカ西海岸へ視察に訪れたところ、そこでクラフトビールとの衝撃の出会いがありました。初めてIPAを口にした瞬間、その独特の香りに「なんじゃこりゃ!」と驚き、その香りがホップ由来であることを知ると、たちまちホップの虜になったと言います。

帰国後、ホップの苗を20株ほど購入し、ホップ栽培を開始。収穫の時期を迎え、再びホップの匂いを嗅いでその華やかな香りに驚き、ビールを造りたいと強く思ったそうです。最初に販売したビール「宇宙IPA」は、委託醸造で完成しました。委託醸造を重ねるうちに、独自でビールが造りたくなり、ついに宇宙ブルーイングを立ち上げることとなりました。醸造所の建物は、インターネットや知り合いから建築方法の情報を入手。重機で山を削って土を整地し、コンクリートや鉄骨などの基礎部分も独自で建設し、大部分を自分たちの力で作り上げました。醸造内の設備は情報が少なく、相当苦労をされたようです。試行錯誤の末、醸造所が完成。その後無事に醸造免許を取得し、2018年の3月より醸造を開始しました。「まだまだ自家製ホップの利用率は低いのですが、継続して無農薬でのホップ栽培を行い、今後は“とにかくやばいビール”を造って宇宙ブルーイングの名前を知ってもらいたい」と締めくくりました。

ホップ農家小林氏活動報告:ホップ農家 小林吉倫氏

午前中に見学した小林吉倫氏のホップ圃場がある北斗市は、1920年ごろからホップ栽培を開始し、一時は大手ビール会社との契約で本格的にホップが栽培されていました。しかし戦後にビール会社がホップ農地を減反し、1994年には市内でのホップ契約栽培が終了するという歴史がありました。
北斗市が誇るホップ「かいこがね」は、1980年に品種登録されましたが、ホップの契約栽培終了後は、細々と栽培され燃やされて肥料にされていました。小林氏は、今残っているわずかな「かいこがね」を後世に残したいとの想いから栽培を決断されました。
小林氏は、大学で農学を学び、その後肥料関係会社に入社。農園整備、肥料の実証や大型施設でのIOTを導入した栽培への取り組みなどに携わりました。

現在、小林氏の圃場で栽培しているホップは、アメリカ・チェコ・イギリス・ドイツ・日本の品種で、販売形態は生・乾燥・ペレット・粉末の4形態、生のホップのみ受注販売を行っています。
小林氏は、一般的な面積当たりの収量ではなく一株当たりの収量を上げていきたいそうで、そのためのポイント3つ「施肥・日射の当て方・潅水」をしっかり行うよう心掛けているとのこと。
また、これから就農しホップ栽培を目指す方は3つの不安要素「経営初期に収入が不安定、3年間の収量が不安定、栽培初期の不安が大きい」があることから、マニュアルを作って統一性をはかることが大事だと考えを述べられました。

小林氏は「今後、ホップ用機械の開発と製造を行い効率化させること、またホップの分析や品種改良・育種などにも注力したい」と意気込みを語ってくれました。 

農業法人“BEER EXPERIENCE”活動報告:BEER EXPERIENCE株式会社 浅井隆平氏

続いてBEER EXPERIENCE株式会社の浅井隆平氏は、日本のビアカルチャーをもっと面白くしていくために、遠野市の官民連携によるホップを使ったまちづくりについて紹介されました。

象徴的なイベントである「遠野ホップ収穫祭」は、岩手県遠野市で毎年8月に開催されおり、収穫中のホップ畑の見学や、摘み取ったばかりのホップに実際に触れることができるホップ体験コーナーなど楽しみ方は様々。昨年は7500人の参加者が全国から訪れ、大変な賑わいを見せました。本年は1万人の参加者を目指しているそうです。

農業を通じた地域活性化に取り組んできた成果として、遠野への移住者がこの3年間で12名にのぼり、それぞれホップ栽培に取り組まれています。遠野への移住希望者は増加傾向にあり、それらの受け皿をどのように拡大していくのかが課題に挙げられています。

また、作業の効率化と生産性の向上、さらには安定した経営維持を目指し、ホップティーやホップシャンプーなどの加工品の販売やホップ以外の農作物の栽培などで、安定した収入を模索していきたいということです

遠野は「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に、ホップ生産だけでなくビールを中心に新しい産業やコミュニティの創出を目指したまちづくりを行なうことを目標にしています。

後半はこちら
ビアジャーナリスト /国内旅行業務取扱責任者

1999年夏。旅行先のカナダでビールに目覚め、各国のクラフトビールの虜に。アメリカのIPAをこよなく愛しつつ現在は国内のクラフトビールにも魅せられ中です。“ビールといえばシマダさん!”という職場での称号をほんものにしたいとビアジャーナリストアカデミーの門をたたきました。2018年夏、旅行社糀屋紋左衛門の活動を開始。有機低農薬野菜と無添加食品の宅配サービス会社での18年間の経験を活かし、農と醸造を旅することをライフワークに「ビールってすばらしい!!」の輪を広げていきます。

ビアジャーナリスト

ビールと551の蓬莱と吉本新喜劇好きの関西人
ホップにハマりすぎて、全国各地のホップ畑にホップを摘みに行くほどに!
ついたあだ名が「Hop Saijo」
夢は、チェコでビール風呂に浸かりながら、蛇口から出てくるビールを好きなだけ飲んで、イグサのベッドで昼寝すること。

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