宮崎県延岡市のクラフトビール醸造所「宮崎ひでじビール」では、2016年から近隣の農家と協力してホップの栽培を行っています。
2020年の今年は、延岡市北方町と西臼杵郡五ヶ瀬町の2か所でカスケードホップを栽培しています。
ホップ栽培は5年目ということもあり、ひでじスタッフと指導農家さんとの息はピッタリ。
ホップは順調に根を張り、高く高く育っています。
地元に愛されるビール造り
宮崎ひでじビールが目指すのは「Think Global, Brew Local」。
それは地元宮崎の風土を最大限に生かし、世界で愛されるビール造りを行うこと。
地域産原料の使用量を増やし、地域農業の活性化に尽力しています。
しかし、ホップ栽培は決して楽なものではありませんでした。
ホップは寒冷地で育つ植物。南国宮崎での栽培は無理ではないかと言われていました。
さらに台風や日照り、2018年には新燃岳からの降灰。
しかし、涼しい山間部にある圃場を選び、選試行錯誤を繰り返しながらホップの栽培を続けたことで、良質なホップが収穫されています。
2019年は、食の宝庫九州の素材にこだわった「九州CRAFT」シリーズの「九州LAGER」に、自家製ホップがドライホッピングで使用され、九州の多様性を表現することができました。
困難に当たりながらもホップ栽培を続けるのは、10年来の夢である、原料の栽培から製造まですべて宮崎県内で行う「オール宮崎」への挑戦です。
そのひとつの形が「YAHAZU PILSNER」です。
地元の農家や県内の機械メーカーと一体となり、麦芽・酵母・水の3つに宮崎県産のものを使用したビールを完成させました。
宮崎県内の飲食店でしか飲むことができない、まさに「地産地消」のビールです。
(新型コロナウイルスの対応のため、2020年のみチャリティー販売あり)
残る原料はホップだけ。今年も農家の協力を得ながらホップの栽培を行っています。
ビールでお客さんを楽しませたい
日本各地に宮崎ひでじビールのファンが多く存在する理由。
それは地産地消への取り組みへの関心だけでなく、ビアファンへのホスピタリティにあるでしょう。
「ビールはモノづくりも仕事ですが、どれだけお客様を楽しませるかというエンターテイメント性も仕事のひとつと思っています」と宮崎ひでじビールスタッフの梶川悟史さん。
2020年のエイプリルフールには幻のツチノコを使用した「ツチノコエール」を販売し、明るい話題を提供しました。(本当は県産ゴボウのビール)
Facebookでのライブ配信では、スタッフ同士の和気あいあいとしたトークや、大喜利、クイズ大会を通じた双方向のコミュニケーションが楽しめ、多くのファンが視聴しています。
今年は新たに「ホップオーナー制度」を導入。
約90名のホップオーナーの苗は8つの畑に分けられ、それぞれの畑担当のひでじスタッフが、圃場主の亀長浩蔵さんの指導の下で栽培をしています。
専用のサイトでは、定期的に成長の様子を更新。
6月16日時点で、もっとも背の高いもので250センチ。毛花も咲き始めました。
1年目の若い苗ですが、蔓を1本に絞ったことで栄養を集中して使えているようです。
オーナーのネームプレートが付けられた苗に、「〇〇さーん、がんばってー」とひとりひとりの名前を呼びながら肥料を与えている動画を見ると、気持ちが温かくなります。
自宅で過ごす時間が長くなりがちな今年ですが、元気に育つホップの便りは、ホップオーナーたちの良い気分転換になっているようです。
夏に収穫されたホップは限定醸造ビールに使用される予定です。
地域の恵みを醸し、伝え、ジャパニーズクラフトビールの更なる可能性を追求する宮崎ひでじビールの取り組み、宮崎県産ホップの栽培の様子は引き続きこのサイトでお知らせします。
DATA
宮崎ひでじビール
Web: https://hideji-beer.jp/
栽培面積: 北方町/800㎡、五ヶ瀬町/500㎡
栽培品種: カスケード