【10月23日 追記】
10月19日(金)より店舗で提供中です。
2018年9月25日(火)
静岡県浜松市のブルーパブ「OctagonBrewing」で、岩手県遠野産のフレッシュホップ「IBUKI」を使ったビールの仕込みが行われた。今回はその様子を密着レポートでご紹介する。
朝9時、ブルワリーに集合。
今日の仕込みの流れと完成イメージ、使用材料の説明を受けて材料準備へ。
今回仕込むビールは、Octagon Brewing初となるフレッシュホップを使ったビール。国産ホップ「IBUKI」をアロマ付けに使った、同社らしいドリンカビリティの高いペールエールを目指す。
麦芽の粉砕(モルトミル)
使用麦芽は2種類。英国産高級品種のマリス・オッターとドイツ産のミュンヘンモルト。
計量しながら粉砕していると、気づかないうちに服は真っ白に。ミルが終わると細かくなってカサが増えた麦芽袋を抱えて醸造ルームに運び、いよいよ麦汁を作る工程へ。
麦芽の糖化(マッシング)
醸造ルームではまずマッシュタンに水を200L張り、ボイラーでお湯を沸かす。
タンクの温度は配電盤の計器で管理しているが、27℃まで上がったところでオールを取り出し、豪快に水をかき回す千葉ブルワー。すると、27℃だった温度が一気に37℃に上昇。温度計のセンサーがタンク下部についているため、撹拌しないとタンクの上下で温度差が広がってしまうという。
目標温度が近づくにつれて配電盤とタンクの往復回数が増え、撹拌時間を秒単位までタイマーで計りながら温度を微調整していく。そして目標温度66℃になったら粉砕麦芽を投入。これが「マッシュイン」だ。
投入直後は温度が下がるので、すぐにオールでかきまぜて温度を引き上げていく。
それも、ただオールをがむしゃらに振り回すのではなく、空気を混ぜ込まないよう、なおかつ麦芽の成分を壊さないように丁寧にかき混ぜる。コツのいる作業だ。そしてまずは60分(場合のよっては75分~90分)ほど置いてデンプンやたんぱく質の分解、糖化を促す。
しばらくしたら上澄み液をすくって糖化の進み具合をチェック。
ホップや酵母を投入する前の状態で、糖度やPH値、初期比重を計測する。今回は17%以上の糖化を目標にしていたところ、計測値は希望を上回る18.3%!麦芽の状態によってはなかなか糖化が進まないケースもあるが、今回はスピーディに糖化が進んでいるようだ。
糖化を確認したところで、酵素の動きを止めるために78℃まで加熱(マッシュアウト)。
そしてボイラーを止め、グツグツ煮込まれていた麦汁をしばらく静置すると、麦芽カスが沈殿してタンクに麦芽殻の層が生まれる。それが落ち着いたら麦汁のろ過と抽出だ。糖化を終えた麦汁には麦芽カスが混ざり濁っているので、麦汁と麦芽カスをこしてクリアな麦汁を取り出す。
ろ過・抽出(スパージング)
次はスパージング。
麦芽の殻に残った糖分や麦汁を回収するため、お湯をかけて麦芽カスを洗う作業だ。
マッシュタン上部にあるシャワーヘッドから76~78℃のお湯がふり注ぎ、麦芽層にしみ込んでいく。このとき麦芽層が空気に晒されると酸化が始まってしまうため、麦芽層が顔を出さない程度の麦汁量をキープしながらスパージングを行う。
麦汁が煮沸釜に移っていく流出量を確認しつつ、ろ過のスピードに合わせながら、スパージングの湯量を決めるため、マッシュタンと煮沸タンク、流量計とにらめっこしながら調整する千葉ブルワー。1回、2回とカウントできない、連続したスパージング方法だ。
そして煮沸釜に移された麦汁が320Lほど回収できたところでろ過工程は終了。
煮沸(ボイリング)
次は麦汁を煮沸消毒して、ホップの苦みや香りを与える工程。
煮沸タンクの温度を90℃に設定している間に、ホップと酵母の準備に取り掛かる。ここでいよいよフレッシュホップの登場だ。今回アロマホップとして使う「IBUKI」は凍結粉砕タイプ。
これは収穫したての生ホップを乾燥させずに冷凍・粉砕し、みずみずしさや香りを保ったままパッケージしたもの。ずっしりと重い袋を開封すると、刈ったばかりの青草のような青々しい香りが一気に広がる。これぞIBUKIの特徴とする香りそのもの。抹茶のような粉末がガチガチの凍った塊が凍結粉砕ホップだ。
4㎏のホップ塊を砕きながら目の細かいネットに小分けし、ドライフード用のネットに詰めていく。作業に要したのは1時間。ペレットであれば計量してそのまま投入できるが、凍結粉砕はティーバッグやだしパックのようにディップして使うため、パイプが目詰まりを起こさないような工夫を施す必要がある。どの程度アロマ付けできるのか、煮沸すると香りがどう変化するのか、千葉ブルワーも手探りしながらの初仕込みだ。
そして煮沸釜の麦汁が93℃になったところで、ビタリングホップを250g投入。
早々にホップの爽やかな香りがタンクの外に広がっていく。投入後も麦汁をこまめに沸かしながら、表面の様子を確認する千葉ブルワー。やがてホップのカスやたんぱく質が凝固したものが表面に浮き上がってくる。
そして煮沸開始から45分後にIBUKIを詰めたフードネットを投入。
漬け込まれたIBUKIが煮沸釜の中で泳ぐのを確認しながら15分煮沸。終わるとフードネットを引き上げて煮沸工程は終了。
ワールプール
煮沸を終えたら再度麦汁のサンプルを採取して、浮き上がった滓(おり)を取り除く工程、「ワールプール」へ。麦汁がタンクの中で渦巻き状に流れることで滓が分離して、20分ほどで中央に積もる様子が開口部からも見える。こうして澄んだ麦汁だけを取り出していく。
冷却
取り出された麦汁は、冷却器を通って発酵用のタンクへ移動。
305Lの麦汁がタンクに移送されたことを確認したら、いよいよ仕込みの最終段階、酵母投入へ。
酵母投入
「酵母の取り扱いは、最も神経をつかう場面」
そう千葉ブルワーが言う通り、酵母を扱う際は手袋を装着。扱う器具も雑菌混入を防ぐためにアルコールやバーナー、消毒水で入念に殺菌する。もちろん会話も厳禁で、千葉ブルワーからはいつになく張り詰めた緊張感が漂う。
酵母を投入する瞬間は、醸造ルームも部外者立ち入り禁止だ。
酵母投入後はしっかりタンクを密閉し、酵母が発酵するのに必要な酸素を10分ほど送り込んで(エアレーション)仕込み工程は終了。これから発酵を経て、3週間ほど熟成に入る。
こうして開始からおよそ12時間。
初めて扱う凍結粉砕ホップの下準備で通常よりも時間がかかったが、じっくり仕込み工程に向き合ったことで、ビールへの愛着は一層増すもの。翌日には発酵状態を表す気泡がタンクから見られ、発酵が順調に進んでいることにほっと胸をなでおろした。
醸造設備をコントロールする計器や配電盤を備えつつも、麦汁の状態や温度は常に目視管理。
設備特性を把握した職人だからこそ、計器と持ち前の肌感覚の両方を使い分けて仕込みに挑んでいる。半日間、ほとんどタンクから目を離さない集中力と熱意に圧倒されたOctagon Brewingの仕込み。順調にいけば、フレッシュホップビールは10月下旬に完成する。
Octagon Brewing初となるフレッシュホップのビール。
一日千秋、タンク2に眠るビールとの再会が今から待ち遠しい。
【I2KI Fresh Hop Ale(いぶき フレッシュホップエール)】
スタイル:ペールエール
使用モルト:イギリス産マリス・オッター、ドイツ産ミュンヘンモルト
使用酵母:アメリカンエールイースト
使用ホップ:IBUKI(凍結粉砕)、コロンバス(ペレット)
アルコール度数:4~5%
IBU:35~40
提供時期:10月19日(金)~
※10/28開催、岐阜県「揖斐川ワンダーピクニック」にも登場予定。
https://wonderpicnic.com/
■提供店舗
【Octagon Brewing】
住所:〒430-0944 静岡県浜松市中区田町315-25
電話:053-401-2007
時間:月・水・木/18:00~23:00、金/18:00~24:00、土/17:00~24:00、日/15:00~21:00
定休:火曜日
公式HP:http://octagonbrewing.com/