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ホップ生産者さんのナレッジを共有するホップトーーク!10回目の日本産ホップセミナー2023春開催!

ホップ生産者さんのナレッジを共有するホップトーーク!10回目の日本産ホップセミナー2023春開催!

2023年3月24日、10回目となる「日本産ホップセミナー2023春」が開催されました。今回のテーマは「ホップ生産者さんのナレッジを共有するホップトーーク」。ホップ農家の作業内容やホップ生産者のナレッジについて語り合いました。

今回のコンテンツと出席者は下記のとおりです。

第1部【ホップ栽培 ビギナー向け】
・ホップリテラシーと1年間の栽培暦/藤原ヒロユキ(京都与謝野ホップ生産者組合)

第2部【ホップ栽培 経験者向け】
・セルフクラファンでブルワリー立ち上げ/シビック・アンド・カンパニー(大阪交野市)
・10日で80人のボランティアが参加/BrewGood(岩手遠野市)
・参加費2万円のホップ収穫祭が定番企画へ/ホップジャパン(福島田村市)
・反収アップの方法と実践/BrewGood(岩手遠野市)
・肥料の選別と撒くタイミングを図る/ホップ農家 小林(山梨北杜市)
・沖縄でホップ栽培が実現/琉球大学農学部(沖縄)

進行
・田山智広(スプリングバレーブルワリー マスターブリュワー)

パネラー
・田村淳一(BrewGood)
・本間誠(ホップジャパン)
・甲斐健(シビック・アンド・カンパニー)
・小林吉倫(ホップ農家 小林)
・川満芳信(琉球大学)
・杉村哲(キリンR&D本部)
・藤原ヒロユキ(ビアジャーナリスト)
・村上敦司(ホップ博士)

ホップリテラシーと1年間の栽培暦/藤原ヒロユキ(京都与謝野ホップ生産者組合)

ホップセミナー2023春

藤原:京都府与謝野町でのホップ栽培をベースに1年間の栽培について解説していきます。地域の気候によってずれる部分もあると思いますが、収穫までの期間は変わらないと思うので、随時ずらして見てください。

ホップセミナー2023春

藤原:まずは株開きと株ごしらえです。これは地域や農家によって、前年の秋のうちに行うこともあります。与謝野では半分くらいの農家が前年に行っています。秋に行う理由は、作業効率や仕事の状況などもありますが、気持ちの余裕ということもあります。天気などでスケジュールが狂うこともあるので。さらに、春に株開き、株ごしらえを行うと、最初にこしらえた株と後にこしらえた株では発芽の時期がずれてきてしまうんですが、秋に行うとある程度そろうということもあります。

藤原:続いては紐下げから芽の選定、ツルの誘引です。株によっては芽がたくさん出てくるので、これを6〜8本に選定していきます。そしてツルがうまく巻き付いて上に伸びていくように誘引し、毛鼻が出てから45〜50日後に収穫できるようになります。去年の圃場の様子になりますが、5月14日から収穫する6月24日までを見てみましょう。

ホップセミナー2023春

ホップセミナー2023春

ホップセミナー2023春

ホップセミナー2023春

藤原:では、株開きと株ごしらえとは何かを説明します。

ホップセミナー2023春

藤原:まず株開きですが、畝を開けて、株のひとつひとつに対して、発掘作業のように根の間の土を取っていきます。1株あたり40分くらいかかるときもあります。

ホップセミナー2023春

藤原:続いて株ごしらえです。この写真の一番左は、そのまま根を引っこ抜いたもの。根は全部切り落としています。真ん中の写真は上の部分を切り落としたもの。株の上の部分を切り落としていく作業が株ごしらえになります。右の写真が株ごしらえしたものを上から撮ったもの。大胆に切り落としていくんですが、もっと握りこぶしくらいのものにしても大丈夫です。

ホップセミナー2023春

藤原:では、株開きと株ごしらえをなぜ行わないといけないのかというと、ひとつの株からたくさんの芽が出て、それが全部成長すると毬花が小さくなってしまうからです。小さいとルプリンの量も少なく、アルファ酸も香りも少ないということになります。また、株ごしらえをせず放置しておくと、下で葉が茂って病気になりやすくなったり、害虫の隠れ家になってしまう可能性もあります。

ホップセミナー2023春

藤原:ちなみに、このように4メートルほどの根を1年で張ってしまいます。1年でこれくらい根を張る植物だということを覚えておいてください。プランターなどでは非常に苦しいんじゃないかなと思います。

ホップセミナー2023春

藤原:なお、ホップを100株栽培するには、360平方メートルの広さが必要です。また、なぜパイプが3セット必要かというと、ホップの重量を支えるために、周囲に斜めに配置したポールが必要なのです。この斜めのポールで支えないと、ホップの重みで倒れる可能性があります。

ホップセミナー2023春

藤原:最後に、日本産ホップに必要なことを挙げておきます。このように株開きや株ごしらえなどをきっちり行うことによって、日本産ホップ自体の品質を上げ、持続可能にしていきたいと思います。また、日本産ホップを使用したビールがおいしいと言われることが一番の目的ですから、そのホップを使ったビールがおいしいと言われることが重要です。頑張ってホップを育てていきましょう。

なお、日本産ホップ推進委員会のウェブサイトでは、私の圃場の栽培日記を連載していきます。毎月上旬、中旬の2回掲載していく予定です。

質疑応答

Q:ホップを育てはじめて収穫までどれくらいかかるか?ホップの寿命はどれくらいか?
A:その土地の条件などによるが、与謝野では初年度から収穫できた。ホップ自体の寿命は20年くらいある。いいものが収穫できるのは10年から15年くらい。

Q:株開き株ごしらえは1年目から必要か?
A:必要だと思う。早いうちからやっておいたほうがいい。

Q:株ごしらえをした後の捨ててしまう部分は、何か他に使えるのか。株分けの方法があれば教えてほしい。
A:ほとんどは捨てる。私はアメリカから株を買った際、1代だけ株分けしていいという条件だった。欲しいという方には販売しているが、そこから株分けするのは控えていただきたい。種苗法もあるので、株をむやみに分けるのは神経使ったほうがいいと思う。

セルフクラファンでブルワリー立ち上げ/シビック・アンド・カンパニー(大阪交野市)

ホップセミナー2023春

甲斐:私たちは交野おりひめ大学という市民大学から生まれた会社で、市民の市民による市民のためのクラフトビール造りを目指しています。みんなの寄付でブルワリーを作って、みんながそこに集まってビールで乾杯することをやりたいということで、セルフクラファンというスタイルで準備を進めています。クラフトビールによって地域の人とか経済、自然が街の中で循環するようにできないかということを考えています。

ホップセミナー2023春

甲斐:我々がクラフトビール事業を始めようと思ったのが2年半前。中津ブルワリーさんがホップを育てていたので見学させていただいたり、今日登壇される小林さんにもアドバイスをいただいたりしました。今年でホップ栽培3年目で、まだブルワリーができていませんが、ホップ栽培からスタートさせています。

ホップセミナー2023春

甲斐:現在は、市民大学のメンバーでDIYで冷蔵室を組み立てたり壁塗りをしたりしています。ホップ栽培と同じように、たくさんの人に参加していただいてブルワリーを造るというチベーションアップのために、こういった作業をしています。

ホップセミナー2023春

甲斐:ビールは委託醸造で造ってきており、最近は農家さんのはっさくでビールを仕込みました。フレッシュホップを使ったビールや、市民大学で造っている日本酒の酒粕を使ったビールなど、ユニークなビールを造っています。市民のビールということで、地域のイベントにも積極的に参加し、PRしてきました。ブルワリーは今年の7月、8月くらいにオープンできそうなところまでたどりつきました。ぜひ応援と寄附をお願いできればと思います。

ホップセミナー2023春

質疑応答

Q:ブルワリーの名前は?
A:市民大学から生まれたということで「シビックブリュワーズ」。免許はいま申請中で7月か8月にオープン、今年収穫したホップで仕込むことができるのでいまからドキドキ・ワクワクしている。

Q:お手伝いしている方々はボランティア?
A:基本はボランティア。クラファンで集めたお金は設備投資にまわす。

Q:今一番苦労していることは?
A:ホップや設備など同時進行で動いているので慌ただしくやっている。しっかりしたブランドを作るために、時間を割いてしっかりやっていかないといけない。

Q:ホップは何株くらい?
A:カスケードを1種類のみ、畑2ヵ所で25株ずつ植えている。

10日で80人のボランティアが参加/BrewGood(岩手遠野市)

ホップセミナー2023春

田村:岩手県遠野市は今年で栽培開始から60年になり、栽培面積は日本一の場所です。ここでホップ農業・産業をどう持続可能にしていくかを企画・活動しています。私自身はホップ農家ではないのですが、栽培の支援をしています。

遠野ではいくつか課題があり、そのひとつが面積あたりの収穫量アップです。持続可能にするためには農家が利益をとれる状態にしないといけない。そのときに大きな課題となったのが、農繁期の人手不足です。遠野のホップ農家さんも高齢化していて、地元のアルバイトの方も高齢化していたので人手の確保が難しいという問題がありました。そこを支援するために、ボランティアの募集を行っています。そのために遠野アグリサポートという団体を立ち上げました。ボランティアの募集やコーディネートを行っており、ボランティアの人が畑に行ってもすぐ作業はできないので、そのサポートも行っています。

2022年は、10日間で延べ83人の方が参加いただきました。農繁期の人手が必要な時にボランティアが入ることで、作業がちゃんとスケジュール通りに終えることができ、結果それが 収穫量アップにつながっていっています。土日に一般のボランティアを募集したり、平日に首都圏の飲食店の方々にちょっと手伝って いただいたり、そういった積み上げでこれだけの方に参加いただきました。

2023年も継続することが決定しています。ちなみに、こういった企画や準備にかかる費用はふるさと納税の制度を利用して財源を集めています。今年もその財源を使って行うのですが、ボランティアの募集以外に新規就農者向けの農作業体験会も開催する予定です。新規就農者を再度募集をしようと動いていますが、ホップ栽培は身近ではないので一度体験してもらって自分に合うかどうかを確かめてもらえるのではないかと思います。

質疑応答

Q:応援に来られた方はどのような方?
A:土日のイベントに参加いただいた方々は、地元の方だけでなく仙台とか東京からわざわざ来てくださった方も。関係性のある首都圏の飲食店の方々や、遠野の高校生にも作業していただいたりした。

Q:どのようなネットワークで募集した?
A:基本的には自分たちの媒体(ウェブサイトやSNS)を活用して情報発信をしたり、チラシを制作して市内に貼ったりということで募集をした。遠方から参加した方の旅費は出ないが、参加していただいた方には記念品として、去年は農家さんがデザインした手ぬぐいをプレゼントした。

Q:地元の方も地域を知るいい機会になるのでは。
A:自分のこととして捉えてもらういい機会になっただけでなく、イベントを開催した後に参加した地元の方が個別に農家さんと連絡を取り合って手伝いに行くこともあり、ホップ農家さんのモチベーションが上がることにもつながったと思う。

参加費2万円のホップ収穫祭が定番企画へ/ホップジャパン(福島田村市)

ホップセミナー2023春

本間:福島県田村市でホップ栽培から始めて、6次産業化につなげていく取り組みを行っています。その中でいろいろとイベントなどをやっていたのですが、ホップ収穫時期は忙しい時期だったので、専門にツアーを組んでいただいてホップ収穫祭を行いました。バーベキューとビールというところから少しランクを上げて、郡山の有名シェフにお願いしておいしい料理を食べながらビールを飲むという付加価値をつけています。2万円でも申込みが殺到する状況です。
内容などは、孫の手トラベルのフードキャンプのページからご覧ください。

質疑応答

Q:フードキャンプの2万円には全部含まれる?
A:飲み代はワンドリンクといった形になるが、バス代や料理など全部含まれる。収穫したてのホップをビールに入れて飲んだり、自分で収穫したホップをお持ち帰りいただくという内容も含まれている。

反収アップの方法と実践/BrewGood(岩手遠野市)

ホップセミナー2023春

田村:先ほどの話ともつながっていますが、持続可能な栽培モデルを実現するために面積あたりの収穫量を上げる取り組みを行っており、先ほどの人手不足を解消して適期栽培することがひとつ。もうひとつのポイントとして、土壌分析を行っています。去年、ふるさと納税の財源を活用させていただいて、市内のいくつかの圃場の土壌を分析しました。岩手県の農業普及技術課に依頼して調べました。

結局、適期栽培をしても土壌がよくなければうまく育たないという仮説があり、現状を把握する必要があると考えています。例えば、上記の図の例は、六角形の枠の数値を超えており、収穫量は非常にいい畑でした。一方、収穫量が悪かった畑は数値がいびつな形になっているといったことがありました。そこで、どんな肥料を増やしたらいいかという調整を繰り返していこうと思っています。

去年は6、7ヵ所だけだったのですが、2023年度からは全圃場のサンプルをとって行う予定です。数年後にはこのデータや分析をお伝えできるのではないかと。また、各農家の作業についてもデータをとっていて、それらが合わさってくると適切なホップ栽培が見えてくると思います。それを新規就農者に伝え、立ち上がりを早くするということを進めているという状況です。

質疑応答

Q:いままでこのような取り組みは行っていなかった?
A:農家が個別には行っており、検査して改良している方の収穫量が良いというデータもあった。しかし、全体として収穫量を上げないといけないため、ふるさと納税の財源も活用して、組織的に行うようにした。

肥料の選別と撒くタイミングを図る/ホップ農家 小林(山梨北杜市)

ホップセミナー2023春

小林:山梨県北杜市で、父親がホップ栽培、私が北斗ホップスというホップ販売や資材の取り扱いなどを行っている会社をやっています。土壌を知るのは、非常に大切だと思うので、今回はその初期導入について取り上げていきたいと思います。

ホップセミナー2023春

小林:土壌診断を私たちも行っているのですが、その中で必ず出てくるのがCEC(陽イオン交換量)という言葉です。土壌における保肥力、どれだけ肥料を抱えることができるかという値です。数字が大きければ大きいほど肥料を抱えることができます。

ホップセミナー2023春

小林:例えば、砂地である砂丘未熟土だとCECの値が小さいため、肥料を保てません。なので、肥料をまとめて大量にまくのではなく、追肥をこまめに行うということでロスを回避することにも役立ちます。

ホップセミナー2023春

小林:多腐植質土の場合はCECが高く肥料の成分が逃げにくいため、肥料のやりすぎにつながることがあります。濃度障害はあまり起きにくいですが、CECを計ることで、作業手順の改善や経費削減にもつながるのではないかと思います。

ホップセミナー2023春

小林:これに対して塩基飽和度という数値もあります。カルシウムやマグネシウムなどは土壌の中でイオンとして存在していて、それらが土壌にどれくらい存在しているのかを把握する必要があります。

ホップセミナー2023春

小林:土壌成分を分析するとCECや塩基飽和度が出てくるのですが、お金もかかってなかなかできないという方もいます。そこで、簡単に把握する方法として、pHの値を用います。肥料成分がその土壌の中に100%あるときはpHが中性になるといわれています。これが6.0から6.5になっているときは、肥料成分が器に対して80%ぐらい入っていると考えられます。ただ、これが正しいかというとそうではなく、あくまでも目安として考えてください。環境によって異なるので、土壌の性質をしっかり把握しておくことが大切です。

ホップセミナー2023春

小林:実際にどのように肥料をまいているかという山梨での例は上図のとおりです。

ホップセミナー2023春

小林:次に肥料の効果期間についてです。一概に窒素肥料といってもいろいろ種類もありますし、土壌が肥料を抱えやすいのかそうでないのかにもよるので、そこも把握して肥料を選ぶ必要があります。

ホップセミナー2023春

小林:例えば、リンではこれらの肥料があり、土壌のpHや性質に合わせて肥料を選ぶようにしなければいけません。私は過リン酸石灰をよく使うのですが、酸性でも植物の生理的には中性なので、pHを下げずにしっかりリンをきかせることができると思います。結局のところ、自分の畑がどのような性質で、どれくらい肥料があるか、いつ効かせたいのかを考えて肥料を変えていくことが大切です。

ホップセミナー2023春

小林:また、リンの肥料の形状もさまざまあります。粉や粒状など4パターンくらいあるのですが、すぐに効かせたいなら粉状の肥料にするといった方法も考えられます。自分の土壌検査をして、どのような肥料を使ってどのようなタイミングでまくかをしっかり把握した方が、最終的にやはりスムーズな栽培になると思いますし、無駄な経費を使わなくなると思いますので、ぜひご活用いただければと思います。

村上:CECや塩基飽和度などが出てきましたが、窒素肥料などをどのような形態で行うのかという話です。ホップの栽培は、1年では簡単に理解できないんですよ。だから、ある程度時間をかけてゆっくりやるつもりでやった方がいいです。その立地条件によってもまったく変わってしまうので、ゆっくり勉強していきましょう。

田山:土壌のpHを計ればある程度診断できるということでしたが、どのように計ったらいいんですか?

村上:遠野の農家さんは、土に入れて計るセンサーを使っています。

小林:簡易的なハンディなセンサーと、正確にやるのであれば、土を蒸留水などに溶かしたものを指標にすることもあります。

沖縄でホップ栽培が実現/琉球大学農学部(沖縄)

ホップセミナー2023春

川満:オリオンビールの樫原さんから琉球大学に沖縄でもホップを栽培したいという相談があり、亜熱帯地域で栽培に成功すれば世界初ということでトライしてみました。

ホップセミナー2023春

川満:2021年には、ハウス栽培と露地栽培を行い、ハウスでは太陽の光を遮光したところ毬花を収穫することができました。2022年には与謝野から株を分けていただいて、5品種の露地栽培に挑戦。亜熱帯地域の栽培方法の確立と各ホップ品種の収量と品質の比較、沖縄県に適した品種の選定を行いました。材料と方法や種類などは下記のとおりです。

ホップセミナー2023春

ホップセミナー2023春

川満:我々は光合成を専門に研究しており、光合成を測定する機械を使って診断を行っています。葉の光合成を測定することで、その土壌の要素や栄養分の要素を診断することができるのです。そのような測定を行いつつ栽培した結果、10月24日時点でもまだ収穫できるような状態でした。

ホップセミナー2023春

川満:さらに、沖縄は毎年大きな台風がくるため、台風がきたら全滅するだろうと考え、台風がくる前に収穫を終えるようにしようとしたのですが、やはり台風によってネットが壊れてしまいました。植え付け時期を早めれば、もう少し台風を避けることができたのかもしれないと思っています。また、もうひとつ沖縄にはホップが好きな害虫がいて、異常発生したということもありました。

ホップセミナー2023春

川満:なお、毬花は7月、8月あたりから収穫できるようになりました。8月15日くらいから株あたりの収穫量が増えたということがわかります。

ホップセミナー2023春

川満:また、光合成速度を計ると、このような結果になっています。横軸が光強度で2000は雲がまったくない晴天の日です。500は薄曇りの日くらいの光強度です。縦軸は二酸化炭素を1秒間にどれくらい吸収するかという値になります。サトウキビはこの値が50くらいで、ホップは稲と同じくらいの値です。コロンバスは強い光でも対応できるといったことがわかります。ただ、収量と光合成速度は一致するとは限りません。

ホップセミナー2023春

川満:そして、アルファ酸の含有量を調べてみると、京都よりも沖縄のほうが高くなっています。ですので、沖縄はホップ栽培にも向いているのかなと思われます。

ホップセミナー2023春

川満:これまでの考察として、2023年はもう2月に植え付けを行いました。台風が来る前に収穫を終えるように考えています。沖縄ではみなさんの時期より1、2ヵ月早く栽培をスタートできるんじゃないかと思っています。

ホップセミナー2023春

川満:収量と品質の比較、沖縄県に適した品種の選定については、上図のように考えられます。沖縄での栽培はまだ工夫していきたいことがありますが、生産することはできたのでそこは大きな進歩だと思います。

ホップセミナー2023春

川満:今年はもう植えつけてありますが、今後は確実な栽培方法の確立につなげ、品種と株数を増やすことで、さらなる品種の選定に役立てたいと思っています。

杉村:世界の状況をトピックスとしてお話しさせていただくと、昨年ヨーロッパは熱波の影響で収量が3割、4割近く減りました。暑さがホップにとって重大なファクターであることがわかると思います。先ほど見せていただいたデータを見ると、アルファ酸が若干低いのかなと思っています。乾燥の仕方などによって違いが生じたのかもしれないので、今後条件を合わせて検証していくとおもしろいかと思います。

樫原:アルファ酸の数値はしっかり一定の数値で比較するということまでできていないため、しっかりやると別の見解が出てくるかもしれないと思っています。

村上:植え付けた翌年はちゃんと春になったら芽は出てきますか?

川満:2年目でも芽が出てきています。

村上:教科書的には低緯度地帯は不向きだと書いてあり、その原因は四季がないからだということなんだそうです。冬がくると休眠し、温かくなった温度を感知して芽を出すというサイクルが低緯度地帯にはないと本に書いてあったのですが、そんなこともないんですね。

川満:12月に選定し、根本から切ったところに土をかぶせました。そして、3月になって土をどかしてみると、芽がもう出てきていました。

田山:沖縄のチャレンジから新しい知見が出てきているので、今後も期待したいと思います。ぜひいいホップを栽培して、それを我々ブリュワーがいいビールにするといういいサイクルをまわしていければと思っていますので、引き続き皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。

2023年のフレッシュホップビールに期待!

今回はホップ農家の栽培の流れと事例を共有しました。次回は、6月30日(金)15:00より、醸造家向けのホップセミナー2023夏を開催予定です。2023年のフレッシュホップビールに期待しましょう!

ホップ生産者さんのナレッジを共有するホップトーーク!
日本産ホップセミナー2023春 YouTube限定動画はこちら

ビールライター

1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務を経てビアライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。

【著書】
教養としてのビール(サイエンス・アイ新書、SBクリエイティブ)
BEER CALENDAR(ワイン王国)

【執筆・監修】
和樂web(小学館)
Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)
東京人(都市出版)
ビール王国(ワイン王国)
ビール大全(楽工社)
るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
あなたのしらない、おいしいビール(cakes)
他多数。

【出演】
金曜たまむすび(TBSラジオ)
ちきゅうラジオ(NHKラジオ第1)
すっぴん!(NHKラジオ第1)
浜美枝のいつかあなたと(文化放送)

Twitter:hiroyukitomie
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