2024年日本産ホップビールの官能評価会開催!10ブルワリーが次のステップを目指した議論を展開
クラフトビアジャパンホップフェスト2024閉幕前の2024年11月29日(金)、2024年日本産ホップビールの官能評価会が開催されました。この官能評価会は2021年から開催されており、今年で4年目となります。今回は下記の10ブルワリーがスプリングバレーブルワリー東京に集まりました(括弧内は分析した日本産ホップビール)。
- BLACK TIDE BREWING(Tohoku Pride)
- OGABREWING(三鷹IPA)
- オラホビール(フレッシュホップインベーダーズ)
- べアレン醸造所 雫石工場(FRESH HOP LAGER)
- ロコビア(息吹の生)
- ヤッホーブルーイング(軽井沢ビール クラフトザウルス フレッシュホップエール2024)
- 湘南ビール(ハーベストホップ)
- 南横浜ビール研究所(遠野産IBUKI生ホップIPA)
- 和歌山ブルワリー(SPECIAL FRESH HOP BEER 2024)
- スプリングバレーブルワリー(フレッシュホップ〜最優秀圃場IBUKI〜)
官能評価会では、各ブルワリーが醸造した日本産ホップビールをテイスティングしあい、ディスカッションを行います。なお、官能評価会に先立って、参加各社の日本産ホップビールをキリンビール仙台工場で化学分析しています。その分析結果をもとにディスカッションを行い、醸造に関する疑問や課題の解決を図ることが、今回の官能評価会の目的です。
今回は、スプリングバレーブルワリー マスターブリュワーの田山智広さんと、 スプリングバレーブルワリー東京ヘッドブリュワーの辻峻太郎さん、キリンホールディングスR&D本部 飲料未来研究の加野智慎さん、日本産ホップ推進委員会の藤原ヒロユキも加わり、約4時間にわたって官能評価やディスカッションが行われました。
日本産ホップビールの分析項目
官能評価会に先立つ化学分析では、下記の項目について分析しています。官能評価会では、この項目の分析結果と官能評価に基づいてディスカッションを行いました。なお、分析項目やホップ由来香気成分の制御などについて、加野智慎さんから解説していただきました。
一部の項目の説明については、2022年の官能評価会の記事をご覧ください。
フレッシュホップビール官能評価会開催!分析結果からわかることとは。
基本分析(エキス・アルコール)
- 比重
- オリジナルエキス
- アルコール(ABW)
- アルコール(ABV)
- 真正エキス
- 真正発酵度
- 外観エキス
- 外観発酵度
- 外観最終発酵度
- 残存発酵度
その他の基本分析
- pH
- 色度
- 苦味価
発酵由来香気成分
- 酢酸エチル
- 酢酸イソアミル
- アセトアルデヒド
- トータルダイアセチル
ホップ香気成分
- リナロール
- βユーデスモール
- ミルセン
- ゲラニオール
- βシトロネロール
- ネロール
- ヘキサノール
- ヘキセノール
全体的にホップの香りをどう出していくかという点については、議論が白熱しました。ホップの生育についての話から、フレッシュホップとして使う際の粉砕方法、マッシュホップでのホップ投入のタイミング、パスチャライズによる香り・味わいへの影響など、さまざまな議論が行われました。
参加ブルワーの感想
各ブルワリーでの醸造方法とともに、今回分析されたデータを見て、どんな工程が数値にどのように反映されているか、といった議論ができるのも、この官能評価会のメリットといえるでしょう。自社のビールについて、参加ブルワーの皆さんから意見をもらい、「来年のフレッシュホップビールを醸造するときに、今回いただいた意見をもとに調整してまたトライしてみたい」という感想もありました。参加ブルワーそれぞれの感想は下記のとおりです。
小笠原恵助さん(OGA BREWING)
マッシングホップは今後に活かせそうだと感じました。知識のブラッシュアップができるのが、官能評価会の良い点だと思います。
丹治和也さん(BLACK TIDE BREWING)
青臭さをどの程度まで出すか、どうやってカバーするかという議論は今後に活かせそうだと思いました。また、アメリカンホップをしっかりきかせていたので不安もありましたが、建設的な意見の場で大変助かりました。全国の日本産ホップを使ったブルワリーの方とつながれたのもよかったです。
筒井貴史さん(湘南ビール)
自社ビール詳細なデータをいただけたので、今後の醸造に活かしたいと思います。分析専門の方もいらっしゃったので、専門的な知識を聞けて有益な時間でした。
高玉汐里さん(オラホビール)
生ホップの凍結・粉砕方法は参考になりました。各社の課題に対してプロフェッショナルな意見が飛び交い、次回醸造時のヒントが沢山得られたり、他社様のこだわりや課題を全員で共有できたりしたことがよかったです。キリンビールの分析官の方も同席され、分析項目や値を掘り下げて説明いただけたことも大変勉強になりました。客観的に自社ビールを見つめ直す良い時間でした。
荒井昭一さん(南横浜ビール研究所)
酵素の失活に必要なディップホップの温度について知見が得られたことが大きかったです。技術や知見の共有、自社ビールの科学的客観的評価、ブルワーのみなさんとの交流が、とても有意義で楽しいものでした。ディップホップの方法について、さらに改良を加えましたので、また次回共有させていただきたいと思います。
佐藤友彦さん(ベアレン醸造所)
ビール全体のバランスを考えたうえでのフレッシュホップの利用や、マッシュホップなどは今後の参考になりました。ホップだけにとどまらない情報交換の場にもなっているのが良かったです。 フレッシュホップだけでなく、製造方法なども参考にできる話もありとても勉強になりました。
片岡紗羅さん(ヤッホーブルーイング)
ホップをお湯に浸して絞る製法やマッシュホッピングにフレッシュホップを使うアイデアは、ポジティブな効果が得られそうなので気になりました。普段お会いできない全国各地のブルワーの方とディスカッションできる点や、製法と分析値を照らし合わせてロジカルな議論ができる点がよかったです。
また、日本産ホップ推進委員会の藤原ヒロユキはホップ生産者でもあり、最後にホップ生産者としての感想を次のように語っています。
「フレッシュホップをどのように使えばよいかという議論もあり、これまでと比べると次のステップに進んでいるなと感じました。次のステップとしては、ホップ生産者も参加して、ブルワーが何を望んでいるかを知るということだと思います。ホップ生産者からも、ブルワーからも、それぞれ聞いてみたいことがあるはずです。お互い意見交換をして、ホップ栽培とビール醸造に活かしていくことが、次のステップになるのではないかと考えています」
客観的なデータに基づいた議論を行い、自社では考えられなかった方法やアイディアを得ることができ、それを醸造方法の改善に活かすという機会はなかなかないはずです。自社ビールのデータや評価をもとに、醸造方法の改善につなげたいという方は、ぜひ今後また開催される官能評価会にご参加ください。
官能評価会などに参加するには日本産ホップ推進委員会の賛同登録を
2024年もクラフトビアジャパンホップフェストや官能評価会にも多くのブルワリーが参加されました。ビールファンに日本産ホップの魅力を伝えるということだけでなく、各ブルワリーの醸造技術向上にも寄与したのではないかと思います。
日本産ホップ推進委員会が行っている日本産ホップ推進の活動に賛同していただければ、各社の情報ページを掲載するだけでなく、今回のような官能評価会などにも参加することができます。
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