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2026年度の栽培スタート!秋田・横手のノウハウを宮崎へ。宮崎ひでじビールの圃場視察と株開き体験レポート

宮崎県延岡市。
南国の太陽が降り注ぐこの地で、日本のホップ栽培の常識を覆そうとする挑戦が続いています。宮崎ひでじビールが目指しているのは、地元とファンを巻き込んで、宮崎の風土を映し出した本当の意味でのローカルビールです。

温暖な九州でのホップ栽培は一筋縄ではいきません。
2016年から始まったホップ栽培は、さまざまな困難に直面しながらも今年で10年目。県総合農業試験場など行政の専門機関や地元農家の協力を得て、現在では官民一体となって栽培に取り組んでいます。去年の収量は全圃場合計で160kg(乾燥前)、過去最大の収量を迎えることができました。

そして2026年春、ひでじビールのホップ栽培がスタート。
そこにホップの一大産地として知られる秋田県横手市から、ホップ栽培のベテランチームが圃場視察に訪れました。
今回は、2026年3月に行われた視察会と株開きをレポートします。

産地を越えた技術のバトン。秋田・横手から宮崎へ

視察のきっかけは、2025年11月に東京・虎ノ門で開催された「特産農産物セミナー」。パネリストとして登壇したひでじビール永野社長のホップ栽培にかける情熱に触れたのが、日本有数のホップ産地である秋田県横手市の大雄ホップ農業協同組合(以下、大雄ホップ農協)でした。日本のホップ栽培が縮小し、後継者不足に苦慮する中で、「何か手助けができるなら」という横手側のあたたかい想いから今回の視察が実現したそう。

▲横手は遠野に並ぶホップの二大産地。生産量、反収(10アールあたりの収穫量)は日本一を誇る(画像提供:大雄ホップ農協)
▲大雄ホップ農協全体の栽培面積は約20ヘクタール、年間約40トンもの収穫量がある(画像提供:大雄ホップ農協)

そして3月16日、代表理事組合長・土田章之さんと、組合員で横手市地域おこし協力隊でもある北野泰之さんがはるばる宮崎へ。土田さんは栽培歴30年を超える大ベテラン、北野さんは長年キリンビールに勤め上げ、退職後にホップ栽培のデータ活用やマニュアル整備など次世代継承を担うフロントランナーです。

▲大雄ホップ農協代表、土田章之さん。大雄ではキリンビール『晴れ風』に使われる「IBUKI」を多く栽培
▲大雄ホップ農協の北野泰之さん。地元小学校でホップの授業を行うなど広報役も務める

視察先は、ひでじビールが管理する県内3エリアの圃場4ヶ所。
当日現場には永野社長とブルワーで品質管理責任者の森翔太さん、同社のアグリバイオ事業を担う肥料メーカー、各圃場の栽培管理を担当している農家、さらに県総合農業試験場や普及センターなど、行政の専門機関の技師も顔を揃えました。

▲延岡市北方町にある北方圃場の視察。土壌伝染病で土を入れ替え、2年目のカスケードを栽培中

 現場で土を触り、株の「声」を聴く

一口に宮崎と言っても、標高や土壌条件によって株の状態は千差万別。
土田さんと北野さんは、それぞれの圃場で実際に土を手に取り、土の状態で保水性や排水性、株のコンディションを丹念に見極めていきました。

 ▲最初は宮崎県北西部の五ヶ瀬圃場。標高平均620mと高く、年間平均気温は13.2℃と冷涼

 

▲続いて延岡市北方町にある北方圃場。土田さんをサポートしながら記録を撮る北野さん(左)

ホップの蔓を誘引する本数や、株と株の間隔といった基本的な設計から目に見えない土中の環境まで。土田さんのアドバイスは、長年の経験に裏打ちされた実践的なものばかり。

「どこを重点的に管理し、どこで力を抜くべきか」


管理のメリハリや土壌環境に合わせた施肥のタイミング、肥料成分の根拠など、現場の悩み一つひとつを紐解いていきます。この日、誰よりも多くの質問を投げかけていたのが、ホップの栽培管理を主導する森さん。

森さん「この日をとても楽しみにしていて、質問したいことが山ほどあったんです。いざお聞きしてみると、細かい部分も丁寧にお答えいただき、さらにさまざまなパターンに合わせた具体的なアドバイスまで。今までは手探りだった部分が多くありましたが、収量を増やすための新たな取り組みへのヒントを数多く得られ、非常に有意義な時間となりました。今年すぐに試してみたいことが一気に増えてワクワクしています!」

森さんは醸造も担うため、ブルワリーの繁忙期とホップの手入れが重なると、ホップに手をかけることが難しくなります。そのため、ホップの成長に合わせて今の時期からどのような管理をしておくのか。栽培適期を逃さず作業負担を減らす工夫や選芽の効果的な方法など、具体的なアドバイスがとても有意義だったと言います。

▲ひでじビールが直接管理する上三輪圃場。簡易測定装置を使って土壌の状態をスクリーニング
▲視察後は行縢の醸造所へ。工場や麦芽粕や処理済みのビール酵母を活用した肥料作りの見学も

協力農家にも横手のノウハウを共有。早速、今年の実作業に取り入れることになりました。

【Q&A】大雄ホップ農協へのヒアリング。宮崎ホップのポテンシャル

視察後に圃場の印象や今後の課題について大雄ホップ農協に伺ったところ、北野さんからご回答をいただきました(以下、一部要約)

宮崎の圃場視察。横手との違いや率直な印象は?

一番大きな違いは「気候」です。桜の開花時期の違いと同じく、積算温度の経過が横手とは大きく異なります。年間の平均気温に基づいた積算温度1で言えば、横手の約3600℃に対し、五ヶ瀬町は約5000℃にも達します。発芽のスタートが早く、開花までの成長スピードが速いのが特徴ですね。一方で課題も見えました。

五ヶ瀬の土壌は火山性で排水性は良いものの、肥料を保持する力が弱めです。加えて株の植え付け位置が高すぎて根を十分に張れていない株が目立ちました。今後は有機質の肥料を使って、土壌改良を進める必要があると感じました。

視察で伝授された「株ごしらえ」の意図について教えてください。

お伝えした「丸坊主にするような深い剪定」は、余計な芽をしっかりと除去してその後に伸びてくる蔓を厳選することで、限られた栄養を集中させるためです。30cmほど土寄せをして畝を上げる作業も欠かせません。これにより新しい根の形成を促し、蔓が風で揺れるのを防ぎ、さらには病気や雑草も抑制できます。株ごしらえから土寄せまでの一連の流れを適期に行うことが、高品質なホップへの最短距離だと考えています。

大規模産地が地方のブルワリーを支援する意義をどう感じていますか?

日本のホップ文化が縮小する中で、栽培が難しいとされる宮崎でのチャレンジに感銘を受けました。気候や土壌、栽培品種も違うので一概には言えませんが、参考になる事例もお伝えできれば幸いです。横手や遠野といった歴史ある産地が全国の生産者や新規参入者をサポートすることによって、日本のホップ全体の活性化に繋がり、ひいては私たちの技術の再評価にもなると考えています。

ホップオーナーやファンにメッセージをお願いします。

オーナー制度はとてもおもしろい取り組みで、ファンと直接つながることができる素晴らしい事例だと感じています。収穫体験では、ぜひ生産者の苦労を想像しながら「手摘み」の喜びを味わってください。

おすすめの楽しみ方は、現地ならではの「追いホップ」です。
生の毬花を縦半分に割いて、ルプリンの香りを揉み出しながらグラスに入れ、その上から勢いよくビールを注ぎます。昨年、俳優の目黒蓮さんにも体験していただきました

ホップをお湯で煮出したホップシロップを作って、お茶や炭酸水に入れて飲んだり、ジンやウォッカに漬け込んで風味をつけたオリジナルのお酒を楽しんでも良いと思います。ホップを通じて「楽しい」という気持ちが広がっていくことを期待しています。

株の個性に苦戦!五ヶ瀬圃場で株開き&株ごしらえ体験

視察後の3月27日。
ひでじビールの全圃場の中で最も収量が高い五ヶ瀬町にある圃場の株開き(株ごしらえ)に参加しました。

 五ヶ瀬は宮崎と熊本の県境。日本最南端のスキー場があるほど標高が高く、九州でありながら冬には雪が降り、冷涼な空気が流れています。

▲土から枯れ枝が何本も伸びた状態。ここから株を掘り起こして、剪定していく

のどかで美しい景色とは裏腹に、株開きは想像以上に過酷なもの。
まずは冬の間に眠っていた株を土の中から掘り起こす作業ですが、水分を含んだ土は想像以上に重く、根にがっちりと絡みついています。新しく用意した剪定バサミが、強靭な根に負けてすぐに刃が立たなくなるほど。

▲土を噛んでしまったり、頑丈な根っこに負けたり、試行錯誤の結果あらゆるハサミが揃った

ここから古い根や余計な芽を丸坊主にカットしていく作業は勇気がいります。
初心者は「本当にここ切っていいの??」と、おっかなびっくり。株の状態に合わせて、1本ずつ切るべき場所を見極める。重労働でありながら、繊細な判断が求められる作業です。最初はそれほど大きくない株でも20分ぐらいかかってしまいました。

▲収穫体験はあっても株開き体験はなかなかレア。これこそ人手が必要

しかし、掘り進めるうちに驚きの発見も。
元気な株からは、なんと120cmもの長さの地下茎が力強く伸びていたのです。

 

▲Before:この日一番の成長株。横に大きく地下茎が伸びていて、掘り起こすのも大変

▲After:森さんが容赦無く剪定。元気な芽を3本ほど残して丸坊主に

この立ち枯れ状態から5ヶ月後にはグリーンカーテンになると思うと、ホップに宿る生命力に驚かされます。そしてこの地道な作業こそが、夏に弾けるあの香りの源泉なのだと、身を以て知る機会となりました。

▲上三輪圃場の1年目のザーツ(2025年8月撮影)

【2026年の株主募集中】あなたも「株主」になりませんか?

ひでじビールのホップ栽培を支えているのは、スタッフだけではありません。
300名に近いホップオーナーの存在が、圃場を支える力になっています。

「ホップオーナー制度」は、誰もがホップ株の「親」になれるユニークな取り組み。出資者はホップの株オーナーとなり、SNSを通じて日々の成長を見守りながら、オンライン飲み会や収穫体験に参加。秋にはそのホップで仕込まれたフレッシュホップビールを味わうまで、年間を通した体験が楽しめます。

2025年のオーナー数は283名、今年もオーナー募集が始まっています。
みなさんも、一緒にひでじビールの挑戦を見届けてみませんか?

▶️ひでじビール ホップオーナー制度の詳細はこちら

  1. 毎日の平均気温を合計。作物の成長や成熟に必要な温度の累積を示す農業の重要な指標 ↩︎
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ライター|編集者

愛知県知多半島出身、大分県大分市在住。
中央大学法学部法律学科卒業後、名古屋と東京の出版社・編集プロダクションで雑誌や広告、販促物の制作に携わり2010年フリーに。紙・WEBを問わず数多くのコンテンツ制作を担当。「ビール(クラフトビール)」「飲食」「生活」「地域」「教育文化」の制作多数。キャリア20年にわたる取材現場経験と行動分析学に基づくアプローチで、行動心理に訴える表現をご提案します。
好きなビアスタイルはジャーマンピルスナー。

【ビール関連の実績】
書籍『日本のクラフトビール巡り 全国203ブルワリー集合!ビアEXPO公式本』
クラフトビールのECサイト「ビールの縁側」ブルワリーインタビュー
フリーペーパー『静岡クラフトビアマップ県Ver.』
書籍『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)
雑誌『ビール王国』(ワイン王国)
グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)
ブルワリーのウェブサイトやPR制作等

【メディア出演】
静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」
静岡FMラジオ局k-mix「おひるま協同組合」
UTYテレビ山梨「UTYスペシャル ビールは山梨から始まった!?」
静岡新聞「県内地ビール 地図で配信」「こちら女性編集室(こち女)」等

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