JR旭川駅から5分ほど歩くと、北海道開拓時代の面影を伝える赤レンガ造りの建物群「上川倉庫」が現れます。北海道旭川市の「大雪地ビール」と併設レストラン「大雪地ビール館」は、明治時代から倉庫として使われていたこの上川倉庫の一角を改装して、1996年に創業。
清らかな大雪山の雪解け水と市内近郊の農作物を使ったビール、そして旭川周辺でとれる食材を使った料理が楽しめる地ビールレストランとして、市民や観光客に親しまれています。
ノスタルジックな建物で旭川生まれのビールを

登録有形文化財に指定されている「上川倉庫」、穀物の保管のために建てられた
「旭川の食文化の発信地」として、大雪地ビールでは旭川市およびその近郊、北海道内産の原材料を積極的に使っています。レギュラービールでも富良野産の大麦や旭川産の米、上川郡下川産の小麦を使用。長年の研究によって自社製麦にも成功しました。
現在は製麦技術を譲渡した契約農家で製麦を行い、地元の信頼関係によって地場産の麦を使っています。
地元とのつながりを大切にしている大雪地ビールでは、どのようなフレッシュホップビールを造ろうとしているのか、醸造部工場長の山崎俊至さんに話を聞きました。

現在のラインナップ。「大雪ピルスナー」、「ケラ・ピルカ」、「富良野大麦」は旭川屈指の人気スポット旭山動物園の動物がモチーフのラベルも
――大雪地ビールのレギュラービールとその特徴を教えてください。
山崎:レギュラービールは「大雪ピルスナー」、「ケラ・ピルカ」(ペールエール)、「富良野大麦」(ゴールデンエール)、「萌芽」(ウィートエール)、「黒岳」(ドッペルボック)の5種類です。他には季節限定ビールもあります。
――レギュラービールとして「ドッペルボック」があるのは珍しいですね。
山崎:そうですね。お客様には「これまで黒ビールは苦手だったけど、ここの『黒岳』はおいしい」と喜んでいただけています。
――ビール造りで意識していること、こだわりを教えてください。
山崎:生産者の顔の見える地元原材料を使って、お客様に安心してもらいたいという考えから、定番ビールの数多くに北海道内産の農作物を使っていることですね。醸造工程に関しては、仕込みから発酵・熟成までコンピュータによる自動管理が一切ないアナログ設備です。なので、糖化工程の温度調整は手動ですし、発酵や熟成工程での香味の変化なども毎日直接確認して調整しています。

「大雪地ビール館」に入って左手にある醸造ルーム。店内から仕込み釜が見える
冷凍粉砕のオーガニックホップ。手間を惜しまず過去最高の仕上がりに

旭川市に隣接する東神楽町で2017年から栽培されているホップ
――フレッシュホップフェストの参加は3回目ですがお客様の反響はどうでしたか?
山崎:大雪地ビールは今までは穏やかな香味のものが多かったせいか、香りと苦みが特徴的なフレッシュホップビール(IPA)はお客様にも鮮烈な印象を与えたようです。さまざまなご感想をいただいた中で印象に残っているのは「こんなビールをたくさん造ってほしい」、「今までのラインナップで一番おいしい」というコメント。高評価をいただけました。
――2020年も東神楽町のホップでIPAを仕込まれたとか。2019年と違う点はありますか?
山崎:今年もブルワリー設立を目標としてホップ栽培を始めた有限会社ブルーメンさんのオーガニックホップを使っています。醸造するスタイルは2019年と同じIPAですが、今年は凍結粉砕ホップを使いました。8月23日に収穫して急速冷凍したホールホップを、フードプロセッサで破砕したものです。破砕するときにドライアイスを加えることで、香りの揮散を抑えて香味成分の抽出効率を上げています。

収穫直後に凍結粉砕したホールホップを使用
――ホップのフレッシュな香りをより生かせるようになったんですね。
山崎:しっかり香りをつけるためには、圧縮されたペレットの6倍以上のフレッシュホップを投入することになります。仕込み釜に入れる際にはホップバッグに詰めたり、浮いてくるホップバッグをひしゃくで沈めてしっかり麦汁に抽出されるようにしたりと、通常の仕込みよりも手間がかかりますが、ひと手間加えたことで過去最高の仕上りになったと感じております。旭川産ホップの魅力を最大限に生かしたIPAをぜひ味わってください!
地元産のオーガニックホップを贅沢に使ったフレッシュホップビール「IPA暁」のリリースは9月下旬を予定しています。造り手が過去最高と自負する大雪地ビールのフレッシュホップビールをお楽しみに!
※写真提供:大雪地ビール
DATA
大雪地ビール
住所:北海道旭川市宮下通11丁目1604-1
電話:0166-25-0400
発売日:2020年9月下旬
フレッシュホップビール販売先:大雪地ビール館
※飲食店向けのケグ販売も行います(ボトルは検討中)。
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