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コラム

播磨をホップがつなぐ!みどりが軸のまちづくり

市民自らがホップを育て、そのホップでビールを造り乾杯する。その活動を通して、仲間や地域のつながりも育つ。そんな「みどりを軸にした市民参加型のまちづくり」を目標にした活動が、「はりまグリーンラボ」による「はりまホッププロジェクト」です。

はりまホッププロジェクトとは

はりまホッププロジェクトの活動拠点は兵庫県播磨地域。姫路市を中心に北は中国山地、南は瀬戸内海に囲まれた豊かな自然が広がる地域です。

そこで展開されるはりまホッププロジェクトは、自分たちの手でビールの原料になるホップを育て、みどりとふれあい、その自らの手で育てたホップを使ったビールで乾杯しようというプロジェクトです。

プロジェクトは市民の皆さんにホップ苗を渡して育ててもらうところからスタートします。ホップ苗の事前予約は3月に開始しましたが、プロジェクトも4年目となり地元のテレビ、新聞、SNSで話題となったことで、あっという間に予定数に達し予約締め切りとなりました。

ホップ受け渡し

市民の皆さんに笑顔のホップ受け渡し

市民それぞれがホップ栽培を開始

4月下旬にホップ苗が受け渡しされると、市民の皆さんはそれぞれの場所でホップ栽培を開始します。ホップは「緑のカーテン」にもなるつる性の植物。家のベランダ、庭、施設の壁面、屋上……さまざまな場所でホップの緑のカーテンが広がります。

プランターでホップ栽培

ビルの屋上テラスや店先のプランターでもホップが栽培されている

耕作放棄地となっている棚田でもホップ栽培

里山の農地でもホップ栽培が広まっています。兵庫県宍粟市の美しい棚田で今年からホップ栽培に挑戦しているのは宍粟市認定就農者の上長さん。

先人から引き継がれた棚田ですが、耕作放棄地となっている場所もあります。何とか有効活用したいとはりまグリーンラボに相談し、50株のホップ栽培をすることになりました。手入れに失敗して枯らしたつるがあり悔やまれていましたが、小さな花をつけたホップを見て、早くこのホップを使って造ったビールが飲みたいと笑顔になっていました。

棚田で育てるホップ

美しい棚田に竹で組まれたホップの支柱がそびえたつ(左)写真右の左から棚田ホップに笑顔の長野さん、上長さん、はりまグリーンラボの平櫛さん

はりまのホップを使ってビールを醸造

7月~8月には毬花が大きく育ち収穫の時期を迎えます。市民の皆さんが育てたホップも収穫され、8月末にはいよいよビールの醸造が行われます。

ビール醸造費用はプロジェクトの一環であるクラウドファンディングで集めた資金が使われ、地元の明石ビール株式会社にて「はりまで育てたビール」として醸造されます。

プロジェクトを立ち上げた思い

「2030年には、はりまの住民が自らホップを育てて、みんなで乾杯し、楽しいコミュニティを形成しています。里山では耕作放棄地の解消につながり、街中では緑化が進んでいます」

これははりまホッププロジェクトが掲げるビジョンです。

プロジェクトを運営するはりまグリーンラボは「みどり」を広める活動を行っています。もともと自然豊かな播磨地域も、街中の都市化が進むにつれて、みどりと親しむ環境が少なくなってきています。
単にみどりを増やすだけなら、例えば自治体から助成金をもらってみどりを植えることが手っ取り早いかも知れない。しかしそれでは市民にとってはどこか他人事になってしまう。自分で育てたホップのビールが飲みたい!そのためにホップを育てる。ホップを育てることが自分事になれば、みどりに対する意識・関心が広がるのではとはりまグリーンラボ事務局の平櫛さんは考えています。

2019年から始めたはりまホッププロジェクトは2022年で4年目となります。ホップの栽培やクラウドファンディングでプロジェクトに参加してくれた皆さんがそれぞれ自分事のプロジェクトとして大きく育ててくれ、「今やはりまグリーンラボだけのプロジェクトではなくなった」と事務局の平櫛さんは嬉しそうに語ってくれました。

収穫したホップと「はりまで育てたビール」を使った石鹸を作る方や、ホップによる染物をする方、ホップ入りのパンを作る方など派生プロジェクトがいくつも誕生しています。これからも市民の皆さんがはりまホッププロジェクトをどのように育ててくれるか楽しみです。

個人でのホップ栽培にもノウハウが溜まってきています。
ホップ栽培の参加者は150人を超えますが、その中で圧倒的にホップの生育状態が良いのが平櫛さんの近所の散髪屋ナイルさんの店主のホップ。きっと人一倍愛情を注いでいるのだろうと秘訣を聞いても「特別なことは何もしていない」とのこと。何とか秘訣を探ろうと手入れの様子を見ていると、プランターで育てているホップに対してなんとバケツ一杯の水をあげていました。もちろんプランターの中は水浸し状態に。10分もすれば水は引いてくるのですが、果たしてこれがホップの成長に良い影響を与えているのか科学的根拠はわかりません。
しかしこの方法を真似ると他のホップの生育も良くなったとのこと。いつしかこの水やりは散髪屋さんの店名から「ナイル・フォール(ナイルの滝)」と呼ばれるようになりました。来年からはりまホッププロジェクトのホップの育て方マニュアルにナイル・フォールを記載するか検討中です。

はりまホッププロジェクトの今後の夢

JR姫路駅を降り世界遺産で 国宝の姫路城に向かってまっすぐに伸びる幅50mの姫路のメインストリートが大手前通り。
大手前通りは姫路市の整備事業により広い歩道と自転車道を分離し、花壇やウッドデッキ、ベンチなどが設置されました。「そこにホップを植えて、大手前通りをホップストリートにしたい」と平櫛さんは語ります。街の中心部でホップを栽培し、市民全員で収穫、乾杯している姿は想像するだけでワクワクします。

もうひとつの夢は2025年の大阪万博にはりまのホップを使ってはりまで醸造したビールを出品すること。大阪万博の想定来場者数は約2,820万人。国内外からの来場者にはりまの魅力を伝え、はりまでの取り組みを知ってもらうため、はりまホッププロジェクトは準備を進めます。

大手前通り

姫路城へと続く大手前通りにて。左からはりまグリーンラボの平櫛さん、飯田さん、筆者

ビアジャーナリスト

故郷新潟からの帰りの新幹線で飲んだクラフトビールの美味しさに感動して以来、ビールの魅力に取りつかれる。
そこからビールに関する幅広い知識と教養を身につけ、2018年に日本ビール検定2級に合格。
少しでも多くの皆さんにビールの楽しみ方を知ってもらえるよう情報発信していきたいです。

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