コミュニティの力で新しいビール文化の醸成を
ホップの里からビールの里へ。
2015年、国内有数のホップ産地である遠野市が、市のホップ農協、キリンビールとともに新たな目標を掲げた。50年以上もホップを栽培してきた国内有数のホップ産地の新たな船出である。
しかし、遠野に限らず国内のホップ生産は減少傾向。生産者も減っていく現状で、ホップ生産地を守るためには、これまでとは違ったアプローチが必要になる。そこで掲げたのが「ビールの里へ」ということだ。
ホップを生産するだけでなく、ビールのおつまみになる食材も生産する、遠野産のビールも醸造する。そのためにホップの新規就農者を募り、遠野市民も巻き込んでいく。あたかも遠野市全体がひとつの醸造所のように動き出し、新たなビール文化を醸成しようとする試み。
それを体現したものが「醸造する町 Brewing Tono プロジェクト」。
中心となってプロジェクトを進めていったのはNext Commons Lab。街中でもホップが見られるようにと「ホップグリーンカーテン運動」を展開したり、ホップ畑の見学や収穫体験もできる「ビアツーリズム」で観光客との交流も図ったりと、次々とプロジェクトを実現していった。
そして、このプロジェクトの拠点となる醸造所が間もなく完成する。2017年11月10日に遠野醸造を設立。設備はまだ整っていないが、早ければ3月までに醸造免許を取得する予定だという。
2018年5月には、「ビールの里」を体現した新しいビールが遠野市民の喉を潤していることだろう。(取材・文/ビアライター富江弘幸)