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夏はホップの収穫の最盛期!
ビールを構成する4要素といえば水、酵母、麦芽、そして何より!ホップ!フレッシュホップの季節がやってきました!
ホップ(学名:Humulus lupulus)とはつる性多年草の植物ですが、実は元々は寒冷地にのみ自生する植物でした。
ビール利用で研究も進み、北海道にも日本固有種があったこと、最近では広島県のような南部でも高地であれば育成が可能であることがわかっています。
ビールにとっては切っても切り離すことが出来ない存在であるホップですが、実際目にすることはなかなかなく、その生態も広く知られているわけではありません。
そこで、ホップを育てる際には、どんな病害をもたらす昆虫に気をつけなくてはならないのか、ホップ農家の方にはどんな苦労があり、どんなことをやりがいとされているのか…岩手県農業研究センターにてお勤めの岩舘(いわだて)さんにインタビューを行いました。
ホップの主な病害
主要病害虫を教えていただきました。
case 1.べと病
病原菌:カビ(糸状菌):Pseudoperonospora humuli
ホップで最も被害が大きい病気といわれています。ホップの生育の全期間にわたり、胞子を飛ばして伝染を繰り返します。
曇雨天が続くと発生しやすく、病原菌が感染すると、葉は褐変します。主蔓や側枝が黄化して奇形になることもあります。毬花に感染すると褐変して縮れてしまい、発病がひどい場合は収穫皆無になることもあります。病原菌は、収穫後の地際近くの新葉などに感染して、根株に移動します。根株や収穫残渣で越冬して翌年の伝染源になります。
この病気は生育期間全般を通じて防除しなければならないため、労力がかかります。
case 2.灰色かび病
病原菌:カビ(糸状菌):Botrytis cinerea
病原菌は多犯性で、ホップ以外の数多くの植物にも感染します。周辺雑草等から胞子が飛んできて、ホップの毬花に感染します。
後述のうどんこ病の発生が問題になる2002年頃まで、べと病と並ぶ重要病害でした。
この病気の防除時期はホップの開花期にあたるため、うどんこ病の防除時期と重なります。また、うどんこ病に効果のある薬剤は、この病気にも有効なので、うどんこ病の防除をしていれば普通は問題になることはありません。
case 3.うどんこ病
病原菌:カビ(糸状菌):Oidium sp.
この病気は、1936年に報告されて以来、国内では確認されていませんでした。しかし、2002~03年にかけ、国内各地で突如大発生し、問題になりました。
若い葉と毬花に白い粉状の斑点が発生します。若い葉での発病をみつけるのは難しく、普通は毬花での発病で気付きます。毬花で多発生すると肥大が抑制されて、褐色になり収量や品質低下の原因となります。
この病気の防除時期はホップの開花期~毬花肥大期です。
case 4.ハダニ類によるもの
ナミハダニ:Tetranychus urticae
カンザワハダニ:Tetranychus kanzawai
ホップの害虫として一番問題となるのはハダニ類(ナミハダニとカンザワハダニ)です。
葉や毬花に寄生し、加害されると葉はかすり状になり、毬花は赤くなり、品質が低下します。ハダニ類は成虫の大きさが0.5mm程度ととても小さいため、最初は気づきにくいです。高温や乾燥の気象条件で増殖しやすく、被害につながりやすいです。ハダニ類は、おもに畑の中に生えている雑草で越冬します。春に雑草で増殖したのち、ホップに移動してくるので、除草につとめることが重要です。
ホップに移動してくる6月下旬以降は、殺ダニ剤による防除のタイミングになります。ハダニ類は薬剤抵抗性が発達しやすいので、同じ薬剤を使わないようにして、作用機構の異なる薬剤をローテーションしながら使うことが重要です。
いかがでしたでしょうか。素人目には見分けがつかないので頭が下がりました。さすがプロ。殺菌効果があり重宝されるホップも、生育段階ではカビに弱いというのは盲点でした。
ホップの病害虫防除において、農家が苦労していることは数多くあります。
- 病害虫の発生予測が困難な場合が多いこと、
- 被害を防ぐために使用する農薬の選定が難しいこと
- 農薬散布前後の降雨による防除効果低下の不安etc
加えて地域により問題となる病害虫の種類も異なり、生育期間全般を通じて注意している必要があるので気を張るシーズンが続きます。
ホップ農家の苦労とやりがい
「契約栽培のホップでは、安定した収入が期待できることや地域経済の活性化への貢献がやりがいにつながります」
そう話す岩舘さん。
ホップ農家の方というのは、一般的な野菜とは異なり基本的に契約栽培で始められる方が多いです。
それ故にビールメーカーとの事前契約に基づいて、価格などの条件が決められます。収穫量が多くても少なくても買い取り価格は同じ。
それが品質の良いホップをたくさん収穫しようというモチベーションにつながると同時に、農家にとっては安心できる収入源となるそうです。
また、これも今回始めて知ったことだったのですが、契約栽培では地域内の農家さんとの契約に自動的になるため、地元産のホップを使用することで、地域経済を支援することにもなります。
クラフトビールは地元を応援できることも魅力の一つ。
ビール好きからすると、ホップを育てる方が増えてくださるのは二重の意味で有り難いことがわかりました。
岩舘さん、有り難うございました!
岩舘 康哉(いわだてやすや)
岩手県農業研究センター 生産環境研究部 病理昆虫研究室 上席専門研究員、博士(農学)、技術士(農業部門・植物保護)、植物医師、土壌医。
園芸作物病害の発⽣⽣態解明や防除技術開発に取り組む傍ら、ホップの病害虫防除に関する試験も実施。X(旧Twitter)にて日々情報発信を行っている。
写真提供:岩舘 康哉さん
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