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コラム

ホップの町”京都府与謝野”に待望の「地元ブルワリー」が誕生。丹後屋醸造/TANGOYA BREWERYレポート
【第1回】初仕込みのビールが2024年3月9日から飲むことができる!

このサイトをご覧になっている方々には言うまでもないが、現在日本各地にホップ栽培が広がっている。
ホップを栽培し8年になる与謝野町にも多くの方がホップ圃場の視察にやってくる。そんなホップの町「与謝野町」に今年(2024)待望のブルワリーができた。

今後、ホップ栽培とブルワリー経営の二足のわらじを履くかもしれない方々に向け、この与謝野町のプロジェクトが一つのベンチマークとなれば幸いと考えた。
1年を通しその記録をお伝えしていきたいと思う。

醸造所も無いのにホップ栽培を始めた町、与謝野

ビールの歴史を紐解くと、ホップ以外にも様々なフルーツ、ハーブやスパイスが使われていたことがわかる。
私の手元に「十八世紀ドイツビールの博物誌」という本があるのだが、それによると、レモンやキイチゴ、ヨモギや月桂樹、アニスやウイキョウなど様々なものが添加されていたと記されている。
そしてその”ハーブのひとつ”がホップであり、やがてビールに必需な原料となってゆくわけだ。

日本のホップ栽培に目を移すと、1871年(明治4年)に北海道岩内町で野生ホップが発見されたという歴史があり、その後は大規模栽培地域で「ビール醸造のためにホップ栽培を始めた」という流れである。

クラフトビール業界においても、醸造所が自社での使用の為に栽培したり、醸造所が地元の農家にお願いして栽培を始めるケースが多い。
そんな中、2015年にホップ栽培を始めた京都与謝野は(言いかたは悪いが)、「醸造所も無いのにホップ栽培を始めた」町なのである。

与謝野のホップ畑

2015年から始まった与謝野でのホップ栽培

すでに、ご存知の方も多いと思うが、与謝野ホップの歴史を振り返ってみたい。
ことの発端は、2015年に与謝野町のブランディング戦略のひとつとしてホップ栽培が始まったことにある。

幸いな事に初年度から収穫でき、京都醸造やスプリングバレーブルワリー京都、一乗寺ブルワリー、常陸野ネストビール、湘南ビール、TYハーバーブルワリーなど全国の醸造所で使われた。

ニューハーベストの期間限定シーズナルビールだけでなく、年間通じて醸造されている定番ビールとしては、一乗寺ブルワリーの【テロワール京都】、TYハーバーブルワリー【京都与謝野エール】、スプリングバレーブルワリー京都【京都YOSANO IPA】などがあり、【京都YOSANO IPA】は2024年2月に行われた「ジャパン・グレート・ビア・アワード」でフレッシュホップビール部門で金賞、エマージングIPA部門で銀賞を受賞、​​オーストリアン・インターナショナル・ビア・アワードでも銀賞を受賞している。

全て手摘みで、その日のうちに真空パックして冷凍するため、新鮮な香りが損なわれず雑味のない苦味がキープされている。
保存性も高く、数年前の真空パックを開封しても摘みたての香りが広がる。

与謝野ホップはすべて手摘み。その日のうちに真空パックして冷凍される。

ホップ栽培からビール造りへ

そんな与謝野町に「醸造所を作り、自分たちの町のホップを使ったビールを造りたい」という気持ちが芽生えてくるのは当然のことと言える
そして、その願いは2024年に叶うこととなった。

2020年から、与謝野産ホップを使用したビール【ASOBI BEER】を委託醸造・販売していた与謝野町の(株)ローカルフラッグが、丹後鉄道「与謝野」駅前にパブを併設した醸造所を建設し、2024年1/30に醸造免許を取得したのだ。
独立系の日本産ホップ産地の先駆けとも言える京都府与謝野町に待望のブルワリーが誕生したわけだ。

与謝野に誕生したTANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSEの醸造所部分の内観。

記念すべき初仕込みは2024/2/1に行われ、与謝野町町長やホップ生産者も出席し、大いに盛り上がった。
ホップ栽培の歴史を知る者の中には涙ぐむ人すらいた。

記念すべき初仕込みには与謝野町町長も訪れ、モルトの投入を行った。

ホップ栽培からビール醸造へという自然な流れが与謝野町で始まったのだ。

3/9(土)、初仕込みビールが飲めるイベントを開催

そして、その初仕込みビール【みだれ髪|YOSANO PILSNER 4.5%】と柚子を使った【柑橘図鑑 京都柚子編|Yuzu Saison5.5%】のお披露目イベントが、3/9(土)の午前11時から行われる。(※ビール名は仮称のため、3/9までに変更される可能性もあり)

当日は、ブルワリー前にフードトラック3台(タコライスなどの肉系、ブリの捌きショーも行う予定の魚系、クレープのスイーツ系)が出店予定。フードペアリングも楽しめる。

ヘッドブルワーの鈴木栄氏によると「初仕込みは、以前に勤めていた忽布古丹醸造でも得意としていたピルスナースタイルを選びました。ホップは与謝野産のIBUKIを使用しています。柚子セゾンは京都嵯峨野水尾実生柚子の皮を使いました」とのこと。

さらにブルワーの野村京平氏によると「3/9のイベントは、地域の皆さんにビールや醸造所を知っていただきたいという気持ちがあります。もちろん、与謝野町以外の方々も大歓迎ですのでぜひお越しください」とのことだ。

左からローカウルフラッグ社長濱田祐太さん、丹後屋醸造ヘッドブルワー鈴木栄さん、ブルワー野村京平さん。

《丹後屋醸造ビールお披露目イベント》

日時:2024年3月9日(土) 午前11時〜午後5時(中締め)〜午後10時30分
場所:「TANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSE」
丹後鉄道「与謝野」駅前:与謝野町下山田1342-1
当日飲めるビール:丹後屋醸造【みだれ髪|YOSANO PILSNER 4.5%】【柑橘図鑑 京都柚子編|Yuzu Saison 5.5%】の2種類
丹後屋醸造インスタグラム

TANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSE外観。与謝野駅改札を出てすぐ目の前なので迷うことはない。

TANGOYA BREWERY & PUBLIC HOUSEのパブリックハウス部分の内観。

丹後屋醸造は続々と新作ビールをリリース予定

丹後屋醸造のビールは、当面の間はケグ(樽)のみのパッケージングで、3/11以降には関西圏、3/18以降には全国に出荷する予定とのことだ。すでに新たなビールも醸造・熟成中で、以下のスケジュールで新作がリリースされる。

3/9(土)、 【みだれ髪|YOSANO PILSNER】【柑橘図鑑 京都柚子編|Yuzu Saison】
3/22(金)、【IPA:シムコー】
3/29(金)、【三つ巴ペールエール】と【与謝野みだれ髪ピルスVer.2】、
現在未定、【IPA:ネルソン】と【ヴィエナ】、【与謝野みだれ髪ピルスVer.2】
(*ビール名は仮称、リリース日は変更される可能性もある。)

なかでも注目したいのは【三つ巴ペールエール】で、与謝野と北杜と富良野のホップを使った100%国産ホップ使用のビールである。
さらには、山椒やスダチを使ったビール、アメリカンベルゴの醸造予定もあるとのことだ。

どの銘柄も500リットルだけのため、15リットルのケグにして30樽前後の出荷となる予定。ぼんやりしていると飲み逃す可能性もあるので注意したいところである。

6月には缶詰機、7月には木樽のフーダーの導入も予定されている。
ホップの町”京都与謝野”に生まれた【丹後屋醸造/TANGOYA BREWERY】。
今後も注目していきたい。

次回は丹後屋醸造とホップ栽培の繋がりについてレポートしたい。

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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