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コラム

藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町 道具編
その④「選芽・誘引に必要な道具」

最近、ホップを栽培してみたい。という人が増えてきています。
私の住む京都府与謝野町にも視察の方が各地からお越しになられます。

そんな方々を含め、ホップ栽培を始めようという人に参考にしていただきたいという願いから、去年2023年は「藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町」という連載コラムを書きました。

その連載コラムに引き続き、今年2024年は、「どのような道具が必要なのか? どのような服装が適切なのか?」というテーマで解説していきたいと思います。

今回は【選芽・誘引】に必要な道具を紹介したいと思います。

放っておくとホップは100本近く芽を出す。

ホップは芽吹き始めると、「放っておくと何本の芽が出るのだろうか?」と思うほどの数の芽が出ます。
品種やにもよりますし、株の個体差もあるでしょうが、100本以上出る場合もあります。

もちろん、これを放置することは望ましくないので、必要な本数だけ残して剪定していきます。
この作業を、【選芽】と呼んでいます。(剪芽と表記することもあるようですが、本コラムでは【選芽】で統一します)

なぜ選芽をする必要があるのか?

読者のなかには「別に選芽する必要ないんじゃないの? たくさん芽が出れば、たくさん毬花が付いてイイんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。
しかし、そうでもないのです。

たくさん芽が出てツルが増えると、それぞれのツルが細くなり、毬花も(数は多いものの)それぞれ小さくなります。
もちろん、ルプリンの量も少なくなります。

また、ツルがたくさんあると葉も茂り過ぎて、風の影響も受けやすいですし、葉に栄養がまわって毬花が小さくなります。
また、葉が多いと蒸れてベト病などカビ系の病気にかかりやすくなりますし、毬花が葉に擦れて茶色くなったりします。
さらに、繁った葉の中に害虫が隠れやすくなります。

選芽することによって、これらのデメリットを減らすことができます。

このような状態だと、蒸れて病気になったり害虫が隠れやすくなります。

残すツルは欲張らない

選芽は、早く健全に育ったツルを残して他の芽は剪定してしまう作業です。
残す芽の数は1株から2〜6本です。
本来は4本程度が適切とも言われていますが、どうしても「伸びる途中で折れたり枯れたりしたらどうしよう……」と思って欲張ってしまいがちです。
私もなかなか思い切りがつかず、多めに残しがちですが……。
残すツルの本数は欲張らないようにしたいものです。

選芽と同時に下葉もカットしておくと良いでしょう。

選芽と誘引は一連の作業

選芽とともにツルの誘引をする必要があります。
選芽と誘引は同時の作業と言っても良いかもしれません。

たくさん出た芽の中から、早く伸びた芽を紐に誘引して、残りの芽を切るという一連の作業です。

誘引はあまり強引にやるとツルを折ってしまうことがあるので注意深くやらなければなりません。

ツル同士が絡まっている時は丁寧にほぐしてからそれぞれを別の紐に誘引する必要があります。

巻きつきづらい時は手で誘引してやると良いでしょう。

先の尖ったハサミを使う

選芽は、指の先で摘んでいくこともできますが、私はハサミで切るようにしています。
ホップに限らず、植物にとって引きちぎられるよりスパッと切ってやるほうが良いと考えているからです。
ハサミは株ごしらえの時に使った剪定バサミではなく、先の尖ったハサミを使っています。
そのほうが、細かな部分に先を突っ込めますし、繊細な作業ができるからです。

先が細いハサミの方が細かい作業ができます。

なお、ハサミは株が変わるごとにアルコールで消毒します。
これは、病気を持っている株を切ったまま他の株を切ると伝染する可能性があるからです。
確率的には低いですが、伝染の可能性がゼロでない限り、消毒するにこしたことはありません。

スプレー式ボトルが便利です。

剪定した芽は放置しない

剪定した芽やツルや下葉をその場に放置する方もいますが、個人的には撤去するのが望ましいと思っています。
これも、病気の伝染予防です。
芽やツルや下葉は集めて離れた場所に捨てるか焼くかしています。

ホップの新芽は希少な珍味

実は、ホップの芽は食べることができるのです。
土に隠れた白い部分はドイツやベルギーで高級食材と言われて食されていると聞きますが、私個人としては、土の上に出た新芽のほうが日本人好みだと思っています。
山菜のような滋味に、ホップらしい苦味が重なりオツな味わいです。

摘んですぐ水洗いする。土が絡んでいることもあるのでしっかり洗う。

沸騰したお湯で茹でたあと、炒めて食べたり、ほうれん草のようにお浸しにしたり、ピクルスにして食べると美味しいです。

ホップの新芽を茹で、和風のお浸しした一品。

先日は、ゼラチンを使ってゼリー寄せにしてみました。
ホップの新芽も姿も見え、清々しい料理になりました。

茹でたのち、和風だしのゼラチンで固めた一品。

このような楽しみ方も、ホップを育てている者の特権なのかもしれませんね。

では、また!

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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