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コラム

ホップの肥料について考える

肥料食い(ひりょうくい)ってどういう意味?

「肥料食い」という言葉、知っていますか?

一般的な会話にはあまり出てきませんが、農業に携わっているとよく聞く言葉です。「トマトは肥料食いだから〜」なんて感じに使われています。

ま、初めて聞いてもなんとなくわかると思いますが「肥料食い=肥料をたくさん食べる=肥料を多く必要とする作物」という意味で、肥料が少ないと発育が悪くなり、肥料をしっかりあげると(吸収率が良いので)効果が出る植物のことです。

つまり、「肥料食い」とは「肥料の多い少ないがはっきりと収量に影響する作物」ということです。
ナス科のナス、トマト、ピーマン。
アブラナ科のブロッコリー、キャベツ、カリフラワー。
バラ科の花などが代表的なものと言われています。

 

ホップは肥料食い?

さて、それではホップは肥料食いなのでしょうか?

わざわざこのコラムで「肥料食い」の話から始まったわけですから、御察しの通り「ホップは肥料食い」です。

ホップにどのような肥料がどれぐらい必要かについては2023年6月15日のコラムに書きましたので、ぜひご覧ください。

 

肥料が高騰している

こんな「肥料食い」のホップですが、毎年の悩みのタネは「肥料の高騰」です。
わざわざ”毎年”と書いたのは、年々上がってきているからです。

農林水産省によるとこの10年で2倍近く、京都JAの資料によると1960年代の6倍! とのことです。
肥料の上昇は続いているのです。

<参考資料>
肥料価格の推移と現状
なぜ、肥料の価格が値上がりするのか?

私の記録では、チッ素とリン酸とカリの混合高度化成肥料は、2021年は1袋(20kg)が1,430円でしたが、去年2024年はなんと3,080円でした。
2倍以上です。

2025年は2,700円台に下がってくれましたが、私の15アール程度の小さな圃場でも年間に20袋(400kg)は撒くので、高度化成肥料だけでも24,000円も値上がりしていることになります。

 

高度化成はオール14(チッ素、リン酸、カリの比率が14:14:14)を使っています。年間で400kgは撒きます。

他の肥料も、BMようりんや苦土石灰などは10%程度、鶏糞は20%程度値上がりしています。

10〜20%程度と言うと許容範囲のように感じる方もいるかもしれませんが、ホップは「肥料食い」なので困ったものです。
鶏糞は100袋(1,500kg)位は撒くので20%の値上がりは頭の痛いところです。

 

肥料の高騰の理由は?

しかし、この肥料高騰の理由は、なんなのでしょう?

農林水産省や京都JAのサイトによると、
1)国際的な穀物生産の増加やウクライナ​​侵攻による肥料原料の供給制限のため肥料の価格が国際的に上昇。
2)円安。
3)コロナ禍とそれ以後の物流の混乱、物流費の高騰。
などがあげられるとのことです。

いろいろな要素が絡まり、肥料は高騰しているわけです。

 

対策は?

さて、このように肥料は高騰しているわけですが、ぼやいていても仕方がありません。対策を練らねばやっていけないのです。

ホップの値段をあげたいのですが、そこにも上限はあります。
となると、なにか今までにない低価格の肥料を探さなければなりません……。

というわけで、今年は馬糞を試してみることにしました。

というのも、隣町の宮津市に「橋立の馬屋」というところがあり、そこで発酵済みの馬糞をもらえることになったので、軽トラに積んで持ち帰り撒いてみました。

軽トラの荷台に積んで持ってきました。

発酵しているので臭いもなく、サラサラです。

とはいえ、馬糞は肥料というよりも堆肥で、商品としても「馬糞堆肥」として売られており、土に養分を与えるというよりも土壌改良として使うものです。
特に市販の馬糞堆肥は敷き藁などが多く含まれているため、牛糞や鶏糞に比べるとチッ素やリン酸やカリの割合が低いとされています。

しかし、今回使用する馬糞は敷き藁の上にされたものだけでなく馬場上でした馬糞そのものを発酵させているので市販の馬糞堆肥よりも栄養価は高いと考えています。

また、馬糞堆肥をもらえれば、土壌改良のために買わなければならない牛糞堆肥やバーク堆肥の節約になりますし。

肥料代そのものの節約にはなりませんが、トータルで考えれば少しは安く上がったかなといったところです。

正直なところ、これだけでは解決にならないのでまた何か考えなければならない気がします……。

 

(次回につづく)

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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