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コラム

不作の年でも生ホップビールを楽しむために

2025年のシーズン終了

2025年の与謝野ホップの収穫はほぼ終わってしまいました。

手摘みする与謝野ホップは、ツルを切り落として収穫する方法とは違って【収穫の終わりがいつか?】がわかりにくいところがあります。

摘む本人が「もう今年はこれ以上摘んでも良いホップは採れないな」と判断したら、そこが今シーズンの終了です。

毎年、8月末から9月頭頃まで摘んでいたのですが、今年は8月20日過ぎには各圃場とも摘み取りを終了することになりました。

前回、前々回でも触れた通り、今年は猛暑とともに雨が降らなかったことも影響してか、早めの終了となってしまいました。

今年は猛暑と水不足ですっかりダメな年になってしまったようだ。

 

大きくなれずに枯れていく毬花。成長期に水不足だったせいか?

シーズン当初は「今年はイケるぞ!」と思ったが

私の圃場の今年の初収穫は6月18日でした。

コロンバスを8.674kg摘み、サイズも大きく、今年は豊作になるのではないかと期待しました。

翌6月19日にはチヌークを3.054kg摘み、こちらもサイズが例年以上に大きく、手応えを感じました。

2日間で10kg以上の収穫でした。

初収穫時のコロンバスは形が良く、粒も大きく、香りも素晴らしかった。

初収穫時のチヌークも形が良く、粒も大きく、香りも素晴らしかった。

収穫当初のチヌークを割った。ルプリンもしっかりあった。

その後も6月24日に0.375kg、6月25日に1.77kg、6月29日に0.710kg、6月30日に1.537kg、7月1日に2.158kg、7月2日に3.454kg、7月3日に2.088kgと、2品種だけで23kg以上の収穫がありました。

他にカスケードやイブキの収穫もあるわけですし、私の圃場面積は与謝野全体の約 1/10ですから、順調にいけばかなりの収穫量が見込めました。

「今年はイケる」と思ったのも責められないかと思います。

初収穫時のイブキも過去最高に粒が大きく、香りも素晴らしかった。

収穫当初の6月末は好調な滑り出しだった。

去年と今年で違ったこと

今年は株の約半数を植え替えたので去年より収穫は落ちるだろうと予測していました。

新しい株は3年目くらいまでは収量があまり良くないと聞いていたからです。

ですから、今年の収量は去年に比べて75〜60%くらいかなと思っていたのですが、実際には50〜45%になってしまいました。

原因はなんだったのでしょうか?

今年と去年で違った点ですが、『しなかったこと』
・畝立てをしなかった。
・薬剤散布を去年は2回したが、今年は1回だけしかしなかった。
の2点です。

それに対して『したこと』
・馬糞堆肥を撒いた。
・草刈りをまめに行った。
・イブキのツル下げをしっかりと行った。
・イブキの側枝をしっかりと切った。
などです。

収穫当初のイブキ。側枝も1節で切り、一粒の大きさも去年より大きかった。

正直なところ
・去年以上にしっかりと手をかけた。
と思っています。

他の要因としては、やはり
・去年も暑かったが、今年はさらに暑かった。
・梅雨時期に雨がほとんど(まったく?)降らず、8月11日まで日照りが続いた。
といったところでしょう。

ちなみに、薬剤散布を1回減らしたのは意図的ではなく、散布のタイミングを外してしまっただけで、害虫や病気の被害が出ないかと内心ヒヤヒヤしていましたが、まったく出ませんでした。

この件に関しては、日照りが続いたためカビ系の病気が出なかったことと、害虫に関してはホップに限らず少なく、これも暑さの影響なのかもしれないという話も聞きます。

また、これは他の地域の話ですが、残留農薬の数値が基準より高く、これも雨が少なかった影響ではないか?と言われています。

古米・古古米ならぬ古ホップ・古古ホップ

今年はホップの収量が少なかったため、毎年ご注文いただいているブルワリーの皆さんのご期待にそう量のホップを提供できないことになってしまいました。

そこで、発注いただいたホップの一部を【今年以前に収穫されたホップ】で賄うことを提案させていただいています。

与謝野ホップは採れたその日に真空パックして冷凍保存しているのですが、それらのホップがどれぐらいの年月の間、劣化せずにフレッシュさを保っているか?をチェックするために毎年いくばくかの量を保管しています。

米不足の際に、古米・古古米(備蓄米)を放出したように、今年は古ホップ・古古ホップを放出します。

フレッシュホップの魅力を保存する

先日、【2020年に収穫して真空パックしたホップ】を開封して組合員で官能評価したところ、まったく支障がない状態だと感じました。

はからずも、ホップは【真空パック&冷凍保存】によって【鮮度が保たれる】ということが証明される結果となりました。

【フレッシュホップ】は【今年採れたホップ(ニューハーベストホップ)】であるべきだ。という意見もあるとは思います。

しかし、今年のようなことを考えると、【フレッシュホップ】の魅力である「鮮烈な香りや風味」をいかに長く保存して、通年や年を跨いでも活用できる方法を今後も考えていくべきなのではないかと感じました。

2020年(5年前)にパッキングがされた与謝野ホップ。

毎年楽しめる生ホップビール

2015年に始まった【フレッシュホップフェスト】は2023年から【クラフトビール ジャパンホップフェスト】と名前が変わりました。

今年採れたホップで造ったビールはもちろん、「生ホップの魅力を【粉砕や冷凍、水蒸気蒸留】などでキープしたビールも楽しみたいね」という意図なのです。

今年採れたニューハーベストホップをそのまま使ったビールも、様々な方法で保存された生ホップを使ったビールも共に楽しめる。

「今年は不作だから、生ホップの香りが華やかなビールが飲めないなぁ……」よりも、「今年は不作だったけど、生ホップを保存しておいたので飲めるね」のほうがハッピーだと感じています。

*日本産ホップでつくったビールを楽しむお祭り【CRAFT BEER JAPAN HOP FEST. 2025】は、9/1〜11/30に全国の賛同ブルワリーや飲食店にて開催されます。

▼詳しくはこちらをご覧ください。
【CRAFT BEER JAPAN HOP FEST. 2025】

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。
近著「BEER LOVER’S BOOK」(リトルモア刊)が大好評発売中。

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