九州で最大規模のホップ栽培を行う宮崎ひでじビール。2024年はメイン圃場が「根頭がん種病」によって壊滅的な被害を受けましたが、2025年はホップオーナーも60人増え過去最多となる283名に。自社で新たなホップ畑を開墾し、土壌もリセット、新しい品種栽培にも取り組む大勝負に出た年でした。記録的な猛暑も乗り越え、自社ホップの生産体制を強化した結果、今年の収穫量は全圃場で昨年比+260%を達成!
その摘みたての生ホップをギュッと詰め込んだ、年に一度の特別なハーベストブリュー、「宮崎フレッシュホップラガー」が2025年9月24日より販売中。7月のホップ収穫祭に続き、8月の収穫から仕込み、そしてビールの完成を祝う「株主祝賀会」までをレポートします。
↓2025年の「ホップ収穫祭」の様子はこちら↓
“楽しむ力”がホップも人も実らせる。最高収量を記録した宮崎ひでじビールの「ホップ収穫祭2025」に見た未来
Contents
自社圃場の開墾と新品種の定植で、2025年は生産量拡大へ

▲今年初めて植えたというチェコ品種「ザーツ」の上三輪圃場(2025年8月13日撮影)
7月10日の五ヶ瀬圃場の収穫に続き、8月4日〜15日にかけて、延岡市の北方圃場と上三輪圃場で収穫が行われました。これらの圃場で今年初めて栽培されたのが、チェコの伝統品種「ザーツ」です。暑さへの懸念がありましたが、ホップは想定を上回るスピードで成長。定植1年目とは思えない実つきを見せ、醸造チームはビールの製造と収穫作業を同時並行で進める多忙な日々を送りました。

▲1週間前は青々としていたが、極端な暑さによって鞠花が茶色に変色

▲「最初はこんなにちっちゃかったのに」と話す表情は、わが子の成長を喜ぶ親のよう
その目覚ましい成長ぶりは、ブルワーの森翔太さんいわく「アメリカ品種『カスケード』の2〜3年目ぐらい」だとか。今年の収圃場全体での収穫量は、なんと生ホップで160kg(乾燥後40kg)を達成!

▲ホップをフォークリフトで加工施設へ。片伯部工場長の笑顔が豊作ぶりを物語る
自社栽培のホップはフレッシュホップビールだけでなく通年商品にも使われています。そのため、一つひとつ丁寧に手摘みされたホップは計量後すぐに乾燥処理が施され、品質を保つために冷凍保存されています。

▲計量後すぐに低温乾燥機へ。8〜9時間かけてゆっくり乾燥処理が施される
この自社ホップを使って最初のフレッシュホップビールの仕込みを行ったのが7月23日。今年は新たな試みとして「マッシュホッピング」製法が採用されました。これは麦芽の糖化(マッシング)を行う段階でホップを投入するもので、ホップの豊かな香りを、より深く引き出すことができます。

▲フレッシュホップビール8本、定番ビール4本、プレミアムオーナー特典のサコッシュが届いた
こうして9月9日に第1弾のフレッシュビールが完成!
自社栽培のフレッシュホップと九州産麦芽を使った、オール宮崎県産フレッシュホップラガーです。一般発売に先駆けてホップオーナーの元へ。facebookのオーナー専用ページでは9月上旬に「届いた!」という喜びの報告が相次ぎました。
待望の乾杯イベント!オンライン完成祝賀会
フレッシュホップラガーの完成を祝い、9月15日(月祝)には、ホップオーナー制度の参加者を対象としたオンライン飲み会「株主様祝賀会」が開催されました。
全国各地から参加するホップオーナーたちが、届いたばかりのフレッシュホップビールで乾杯!ひでじスタッフを含めて常時50名以上が参加した宴は、気づけば2時間半というロングラン飲み会に。

▲もちろんフレッシュホップラガーで乾杯スタート
祝賀会では、今年のホップ栽培の様子から収穫量までの実績報告とフレッシュホップビールの紹介、今後の展開としてイベントの出店情報や新商品のリリース情報、新しいオリジナルグッズなどのひでじニュースを発表。続いて今年開催されたキャンプイベントや、延岡駅からランニングで醸造所まで向かい、BBQと飲み放題を楽しむ「RUN&BEER&BBQ」といった催しの思い出話にも花が咲き、参加者同士の交流も深まっていきました。
▼収穫祭当日の様子を動画にしてみました(動画制作:ワイワイワークス合同会社)
参加者がひでじビール以外のおすすめブルワリーやビールを紹介する「推しブルワリー」 では、忽布古丹醸造(北海道)、Golden Rabbit Beer(奈良)、八ヶ岳タッチダウン(山梨)など、全国の実力派ブルワリーの名が次々と。スタッフも交えて好きなビールを語り合う時間は、ビール愛好家にとって最高の交流の場です。

▲永野社長お手製(!)の御酒飲帳スタンプ
ひでじビールが出店するイベントを巡ってスタンプを集める「御酒飲帳スタンプラリー」では、来年からアクセスなどの参加難易度に応じたポイント制を導入予定。年間最多ポイントを集めた優勝者を決めるという新たなポイントシステムも発表されるなど、笑いの絶えないあっという間の2時間半。
今年283名が集まったホップオーナー制度、来年は350名まで目標を拡大して募集することが永野社長から発表され、画面越しでありながらも、つくり手とファンが一体となった忘れられない宴でした。一方通行の発信にとどまらない参加型企画を通じて、積極的にオーナーやファンとの絆を深める、これがホップオーナー制度の大きな魅力でもあります。
※2025年のホップオーナー制度の交流コンテンツはオンライン祝賀会までですが、今後も冬の圃場の様子や、イベント情報、新作情報など、さまざまなニュースが届けられます。
延岡愛が凝縮された総力戦!「秋のむかばきビアフェスタ」はファン感謝祭
オンラインで深めた絆は、リアルの場でさらに熱を帯びます。
行縢醸造所の敷地内で毎年開催されるビアフェス「秋のむかばきビアフェスタ」です。今年は9月20日(土)、9月21日(日)の2日間で開催。フレッシュホップビールが樽生とボトルで初めてお披露目される機会でもあります。

▲行縢の雄大な景色を眺めながら飲める。最高の幸せがここに
会場にはオンライン祝賀会でも見かけたホップオーナーの姿も。関東からわざわざ運ぶファンも少なくないことに驚きます。みんなこの日を心待ちにしていたのです。

▲銘柄を見ればわかる、約束されたおいしさ
自社を含めて30種類もの全国の樽生ビールが提供されるタップスタンド。しかも、ゲストビールも含めて全品600円(370mlカップ)という破格の料金設定!正直言って、宮崎のこの場所で、これだけたくさんの銘柄が一度に飲めるなんて!
まさに天国。

▲ここは宮崎県の山奥
このイベントは、いわばひでじビールの総力戦。
ひでじファミリー渾身のファン感謝祭です。スタッフの家族や子供たちが会場ではしゃぎまわる姿がほほえましく、ひでじビールが歩んできた歴史と、ファンへの深い愛情を感じるひとときでした。

▲片付けの際には2袋(約50kg)をひょいひょいと担ぐひでじチーム
モルト袋を運ぶ参加型のリレーイベントや伝統舞踊、地鶏の炭火焼などの延岡グルメも楽しみましたが、ひそかに感動したのは小さな子連れファミリーへの心遣いです。手作りのおむつ替えスペースや授乳室を完備、しかもきちんと空調も効いていて備え付けのウェットティッシュまで。正直、屋外の、しかもビールイベントでは全く期待していなかっただけに、ありがたく活用させていただきました。
もちろん貴重な「BOSSスタンプ」も忘れずゲット(ポイント制になったらこのイベントは高ポイント間違いなし)。

▲社長プレゼンツ・巨大マグロorカンパチの解体ショーに本気で期待しております
つくり手と飲み手が直接ふれあい、笑顔で杯を交わす。地域や家族とともにビールで祝う“地ビールまつりの真髄”を、ここで見た気がします。
フレッシュホップラガーはどこで飲める?
さて、お待たせしました!
「宮崎フレッシュホップラガー2025」
フレッシュホップならではの青々しい香りが立ち上り、そこにカスケード由来の柑橘系フレーバーが追いかけてきます。ホップアロマを香ばしいモルトの風味がしっかりと下支えするバランスは、麦芽も自社でまかなうひでじビールらしい仕上がり。ラガーらしい強めの苦味は、肉料理などの力強い味わいにも負けない存在感を放ちます。
「宮崎フレッシュホップラガー2025」は以下の場所で購入・体験できます。
<ボトル>
販売日:2025年9月24日から販売中
販売場所:宮崎ひでじビール 公式ECサイト、宮崎ひでじビール行縢醸造所 売店、イオン延岡店 ほか
※樽生は宮崎ひでじビール直営店他、取扱店の詳細についてはブルワリーにお問い合わせください。
<樽生ビールが飲めるイベント>
「クラフトビール ジャパンホップ フェスト 2025 feat. 秋刀魚 in SVB東京」
日時:2025年10月25日(土)〜26日(日)
場所:スプリングバレーブルワリー東京(東京都渋谷区代官山町13-1ログロード代官山
(DAY1)10月25日(土) ①11:00-14:00 ②15:00-18:00 ③19:00-22:00
(DAY2)10月26日(日) ④11:00-14:00 ⑤15:00-18:00
※3時間ごとの完全入れ替え制、LOは終了30分前予定
年に一度しか味わえない、特別なビールの季節。
宮崎の太陽と大地の恵み、そして造り手の情熱が詰まった一杯を、ぜひこの秋、味わってみてください!
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