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コラム

ブロアーによる楽な【株開き】とは

毎年【株開き】と【株ごしらえ】という作業を行う

ホップは多年生である。

春に芽吹き、初夏から初秋に収穫され、晩秋から冬には枯れていくというサイクルを毎年繰り返す。

そう聞くと「毎年勝手に芽吹いてくれるから楽ちんだなぁ」と思う方がいるようだが、とんでもない。

ホップは毎年【株開き】と【株ごしらえ】という作業を行う必要があり、これがとても大変なのだ。

この作業が一番辛いと言っても良いだろう。
【株開き】と【株ごしらえ】が無ければ、ホップ栽培は牧歌的な農業と言えるのかもしれない。

この2つの作業を具体的に説明すると【株開き】は、ホップの株をあらかた掘り起こす作業で、その株の不要な側根や芽を切り取る作業が【株ごしらえ】である。

株開きは重労働と根気のいる作業

特に株開きは体力と根気を必要とする。

株の周りの土を鍬で掘り起こすという過酷な重労働と、這いつくばってさらに細かく土を掘り起こすという繊細で根気のいる作業が続き、側根や芽が入り組んでいる株などは1時間近くかかってしまうことがある。

土の中では主根の他に側根や芽が育っている。

粗い株開き。備中鍬(三本鍬)で周りを掘り起こす。

備中鍬。先が3つに分かれている。

 

株の周りを放射線状に掘り起こしていく。

細かい株開き。

 

一本爪レーキ(片手鍬ピッケル型)で、細かく掘っていく。

 

根かき熊手一本爪でさらに細かい土を掘っていく。

株開きのあと、側根や芽を切るのが株ごしらえだ。

体力的にも時間的にもありがたいブロアー

この重労働かつ根気のいる作業を少しでも楽にする道具がブロアーである。

ブロアーでの株開きは2024年の4月にも紹介したが、今回は加えて【ハンディー型ブロアー】も紹介したい。

大まかに説明すると、「周囲を掘る備中鍬のかわりにエンジン型ブロアー」、「一本爪レーキや熊手一本爪のかわりにハンディー型ブロアー」を使うということである。

文章で説明するよりも動画の方がわかりやすいので、ご覧いただきたい。

 

まずは、根かき熊手一本爪で土をほぐす。

 

エンジン型のブロアーで、周辺の土を飛ばす。根かき熊手一本爪と併用すると効果的。側根はほとんどこの作業で露出する。

 

根かき熊手一本爪とハンディー型ブロアーでさらに細かい土を飛ばす。

ブロアーの価格はピンキリだが、エンジン型ブロアーは25,000円〜7,500円、ハンディ型ブロアーは18,00円〜2,500円といったところだ。

ちなみに、私が使っているものはどちらも「価格帯の真ん中あたり」のもので、これで充分な働きをしてくれる。

ただし、ハンディ型は(機種にもよるが)フルパワーで使うとバッテリーが3時間〜半日くらいしか保たないので、1日中使いたい場合は2〜3台ある方が安心である。

また、ゴーグルなどで目を守ることも忘れてはならない。

株開きや株のこしらえをする意味は?

しかし、「株開きや株のこしらえは必要なのか?」という疑問を持つ人もいる。

なかには「株ごしらえなんかやらなくても、ホップは育つ」と言う人もいる。

たしかに、株開きや株ごしらえをしなくてもホップは芽吹き、育つ。

しかし、おびただしい数の(おそらく100を超える)芽が出て、その全ては細いままに違いない。

以前、長野で野生化したホップがあるというので見に行った事があるのだが、細いツルに小さな毬花がついている状態だった。

やはり、芽やツルの本数は管理してやらないと、健全な毬花がつかないと感じた。

また、株を開くことで、土の中の株の状態がわかる。
健康診断のようなものだ。

そして、株ごしらえをすることで不健全な部分を切り取ってやる事もできる。

株開きや株ごしらえは、毎年するべき作業だと私は思う。

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。
近著「BEER LOVER’S BOOK」(リトルモア刊)が大好評発売中。

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