フレッシュホップと乾燥ホップの香気成分の違いは?特有の成分を紹介
フレッシュホップビールからは、特有の、みずみずしいグリーンの香りが感じられます。ついつい、心地よく飲み進めてしまいますね。
では、その香りは、どんな香気成分に由来するものなのでしょうか。
フレッシュホップと乾燥ホップとで、含まれる香気成分がどう違うのか、調べてみました。
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香気成分の比較
ドイツ・ミュンヘン工科大学のSchieberle教授らは、2000年に、フレッシュホップと乾燥ホップに含まれる香気成分の比較結果を論文発表しています。
この研究で用いられているのは、シュパルターセレクトという品種のアロマホップ。フレッシュホップおよび乾燥ホップのそれぞれに含まれる香気成分の種類や香りの強さを、ガスクロマトグラフィー(サンプルを気化して個々の成分に分離し、成分名や濃度を求める分析法)によって調べています。
論文中では、分析結果が複数の大きな表で詳細に記載されていますが、そのデータをシンプルにまとめ直したのが以下のグラフです。グラフの横軸は、香気成分の種類。縦軸は、FDファクターと呼ばれる、香りの強さの指標です。
フレッシュホップには(Z)-3-ヘキセナールが多く含まれる
上のグラフをひと目見て気づくのは、フレッシュホップには、(Z)-3-ヘキセナールという香気成分が乾燥ホップよりも明らかに多く含まれている点です。
(Z)-3-ヘキセナールは、草や葉の匂いを形成する主要な成分です。「青葉アルデヒド」という通称で呼ばれることもあります。フレッシュホップ特有のグリーンの香りには、この香気成分が大きく寄与しているものと考えられます。
また、サッポロビールの研究により、この(Z)-3-ヘキセナールは、ビールののどごしを向上させることも分かっています。フレッシュホップビールをついついゴクゴク飲んでしまうのは、この成分の影響なのかもしれませんね。
フレッシュホップに多く含まれるその他の香気成分
(Z)-3-ヘキセナールのほか、メチオナール(火を通したジャガイモのような香り)、フェニルアセトアルデヒド(ハチミツやフローラルの香り)、といった香気成分も、フレッシュホップのほうが乾燥ホップよりも強く検出されています。
乾燥ホップに多く含まれる香気成分
では逆に、乾燥ホップに特徴的な香気成分についてもみてみましょう。
先ほどのグラフからは、乾燥ホップには、trans-4,5-エポキシ-(E)-2-デセナール(メタリックな香り)、(3E,5Z)-1,3,5,9-ウンデカテトラエン(フレッシュ、バルサム樹脂といったニュアンスの香り)、ヘキサナール(グリーンの香り)、といった香気成分が、フレッシュホップよりも多く含まれていることが読み取れます。ただ、その香りの強さは、フレッシュホップのときの(Z)-3-ヘキセナールのような、香り全体の特徴をはっきり変えてしまうほどのものではありません。
これらの香気成分は、いずれも、ホップに含まれる脂質の一部が乾燥中に酸化・分解されて生成するものと考えられます。
フレッシュホップ特有の青葉の香りを探してみよう
Schieberle教授らの研究によって、フレッシュホップ特有のグリーンの香りには、(Z)-3-ヘキセナール(青葉アルデヒド)という香気成分が大きく寄与していることが明らかになりました。
フレッシュホップビールを飲むときには、ぜひ、青葉の香りを探してみてください。
主な参考文献
- Steinhaus, M.; Schieberle, P. “Comparison of the Most Odor-Active Compounds in Fresh and Dried Hop Cones (Humulus lupulus L. Variety Spalter Select) Based on GC−Olfactometry and Odor Dilution Techniques” J. Agric. Food Chem. 2000, 48, 5, 1776-1783.
https://doi.org/10.1021/jf990514l - サッポロビール株式会社 ニュースリリース「世界初!香りがビールの「のど越し」に影響することを発見」(2013年5月16日)
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000007956/