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コラム

藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町 道具編
その⑦「収穫に必要な道具」

最近、ホップを栽培してみたい。という人が増えてきています。
私の住む京都府与謝野町にも視察の方が各地からお越しになられます。

そんな方々を含め、ホップ栽培を始めようという人に参考にしていただきたいという願いから、去年2023年は「藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町」という連載コラムを書きました。

その連載コラムに引き続き、今年2024年は、「どのような道具が必要なのか? どのような服装が適切なのか?」というテーマで解説していきたいと思います。

前回は【除草】に必要な道具について書きましたが、今回は【収穫=ホップ摘み】に必要な道具を紹介したいと思います。

ホップ収穫には2つの方法がある

ホップの収穫には大きく分けて2つの方法があります。
それは
・機械摘み
・手摘み
の2つです。

機械摘みは脱穀機のような原理で、ツルや葉と毬花を振るい分ける方法で、手摘みは毬花をツルから手で摘み取っていく方法です。

大型農場では機械摘みが一般的。

また、手摘みは
・ツルを切って手で摘む
・ツルを切らずに手で摘む
の2つに分けられます。

ツルを切り、地面で毬花を手で摘む。

ツルを切らずに、高所作業車や脚立に登り、手で摘む。

機械摘みに関しては、摘果機という機械が必要なので、規模の大きいホップ産地でしか行われておらず、日本のホップ産地のほとんどが「手摘み」を行なっていると考えられます。
与謝野でも手摘みを行なっています。

さて、その「手摘み」ですが、先ほどもお話ししたように「ツルを切る」やり方と「ツルを切らない」やり方があります。

なぜ、2つのパターンがあり、それぞれのどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

ツルを切って手で摘むメリットとデメリットは?

まず、ツルを切るやり方のメリットは「安全である」ということです。
ホップは5~6mの高さに成長しますので、先のほうの毬花を摘むためには高所に登る必要があり、危険が伴います。

ツルを切り落とし、地面で摘み取れば高所作業が避けられ安全です。

デメリットは、ツルを切ってしまうと収穫がその日で終わってしまうということです。どんなに上手く育てたとしても、1つのツルの中に成長に違う毬花が混在しています。ツルを切ってしまうと未熟と完熟とか過熟が混じってしまう可能性があります。

ツルを切らずに手で摘むメリットとデメリットは?

ツルを切らずに手で摘むメリットは、完熟の毬花だけを選んで摘み取ることができるということです。
ひと粒ひと粒厳選して摘み取ることが可能なのです。

さらにもうひとつは、二期作できるということです。
ツルを切らずに置いておけば、側枝に付いた毛花が毬花に育ち、もう一度収穫の季節を迎えることができます。

それに対してのデメリットは、高所作業の危険性です。
また、収穫期が長く続き、作業効率が悪いということも挙げられます。

高所作業車は高価だが

高いところで手摘みする場合、必要になってくるのが
・高所作業車(昇降機)
・脚立
です。

高所作業車は果樹園などで使っている農業用のものが使いやすいです。
3.5m程度上がってくれるものであれば、ホップ棚の一番上の場所まで手が届くので、充分です。
価格は新車ですと100万円から200万円を超えるものもありますので、高価な投資と言えます。
が、本格的にホップ栽培をするのであれば、必須の農機具です。
参考:KIORITZサイト

もちろん、高所作業車がなくても脚立があれば高い場所での摘み取りは可能です。
とは言え、作業効率は著しく落ちてしまいます。

安全確保のためハーネスを

高所作業は落下の危険を考えるとハーネスを着用する必要があります。
実は、私はハーネスをしていない状態で高所作業車から落ちた経験があります。
幸いなことに、あまり高く無い場所から落ちたので怪我はしませんでしたが、一番高く上がっている状態から落ちていたらかなりヤバかったと思います。
それ以来、めんどくさがらずにハーネスを着用するようにしています。

肌の露出は極力少なく

ホップのツルは、チクチクするので、長袖のシャツを着るかアームカバーを付けることをおすすめします。「肌が強いから平気平気」とおっしゃる方がいますが、あとで後悔しないように、腕は守っておきたいものです。
また、ホップ畑には刺す虫もいますので、肌を晒すのはおすすめしません。
同じ理由から、短パンの着用も危険だとお考えください。
もちろん、手袋も必需です。

収穫したホップを集める

摘み取ったホップは、収穫用のバッグに集めていきます。特に腰に付けるタイプが便利です。「収穫用ウエストバッグ」で検索すれば見つけることができます。

収穫用ウエストバッグ。ベルトで腰に巻きつける。

ウエストバッグに溜まったホップは農業用のコンテナがあれば、集めることができます。
ホームセンターでも売っていますし「収穫コンテナ」「採集コンテナ」で検索すれば見つけることができます。

すぐに真空&冷凍

摘み取ったホップはみるみる劣化していきます。
私の経験では、摘み取りから24時間以内になんらかの処理をしないと変色(茶変)したり香りが悪くなります。
そのため、できるだけ早く加工が必要です。
大型農場では、摘果機で機械摘みしたあと乾燥機にかけ水分を抜きます。
さらに、粉砕したのちペレットにする場合が多いです。
しかし、乾燥やペレット化すると、ホップの香りはやはり落ちてしまいます。

与謝野の場合は、乾燥させずに真空パックして冷凍します。
この方法ならば(今までの経験則ですが)数年単位で劣化しません。
以前、ある醸造家が「収穫した年が違うサンプルをいくつかブラインドで確かめてみたい」と与謝野まで来ましたが、「全くわからない」と言っていました。

与謝野の場合、500gごとにパックする。

 

真空パック機で空気を抜く。

真空されたパック。このあと、すぐに冷凍庫に入れられる。

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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