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ホップを守ろう。〜藤原ヒロユキのホップ栽培日記〜

2023年5月29日@京都与謝野 藤原ヒロユキホップ圃場の様子

最近、ホップを育ててみたい。という人が増えてきています。
私の住む与謝野町にも各地から視察の方がお越しになられます。

京都府与謝野町では、2015年からホップ栽培を始め、2018年からは私自身もホップ圃場を開設し本格的にホップを栽培しています。

1年間を通して、私の栽培日記が皆さんのホップ栽培のヒントになれば幸いです。

側枝を処理します。

ホップの主茎は空に向かってグングンと伸びていき、それに伴い「側枝」も次々と出てきます。
毬花はこの「主茎から側枝が出る節の根元」と「側枝の節の根元」に付くのが一般的です。
文章にするとわかりにくいですね。次の写真をご覧ください。

主茎から側枝が出る節の根元から出た毬花。

 

側枝の節の根元から出た毬花。

根元から7〜8節まではあまり良い毬花が付きませんし、作業もしにくくなるので、側枝は切り取ってしまいます。

下の側枝は切り取ってしまう。

また、イブキという品種は側枝が水平に近い角度で伸びる(チヌークなどのアメリカ品種はバンザイをするように斜め上に向かって伸びていきます)ので、毬花が付きすぎると自重で側枝の根元から折れてしまうことが多々あります。

なので、12節あたりまでの側枝は第1節か2節から先をカットします。

それより上の側枝は、伸びが良いので上手く主茎に巻きつく場合は残しますが、巻きつかない場合はやはり1節で切るのが無難だと思います。

1節で切った側枝。切ったところからまた次の側枝が出ている。

 

2節で切った側枝。切ったところからまた次の側枝が出ている。

 

ただ、この件は、あくまでも私のやり方ですので、絶対的なものではないとお考えください。
風の強くない地方の場合、毬花の重みで側枝が折れるといったことは無いのかもしれないですし……。

ここから先は除草&除草

ホップが成長する季節は雑草が成長する季節でもあります。

朝ドラの主人公槙野万太郎(モデルは植物学者の牧野富太郎)は「雑草という名前の草はない」とおっしゃいました。
確かにそうでしょう。雑草と呼ぶのは人間の都合にすぎません。
ですが、良いホップを育てるためにはホップ以外の草を圃場から除かなければなりません。

除草は、草刈機で行います。
畝と畝の間は、四輪で動く草刈り機を使います。うちでは「ポチ」という名前で読んでいます。引っ張って使うときに犬の散歩のような感じがするからです。

四輪駆動の草刈機。ポチ。

ポチで刈ることができない場所(畝のきわなど)は、刃のついた円盤が回転する草刈り機を使います。
名前は「マサオ」です。

さらに、鉄柱やワイヤーの近くや石が多い場所はコードが高速で回転する草刈り機を使います。
名前は「タミヨ」です。なぜ、マサオやタミヨなのか? はお察しの通りです。

左がコード式のタミヨ。右が刃のついた刃が回転するタイプのマサオ。

 

青いワイヤーが高速回転して草を刈り取る。

 

大まかな草刈りはこれら文明の利器を使いますが、ホップの根元は手作業で草を刈るしかありません。

草刈り機では、間違ってホップ自体を刈り取ってしまう恐れがあるからです。
ホップが2m以上に育つと、除草剤を使ってもホップに影響なく草が枯れると聞いたことがありますが、私の場合は使ったことがありません。

ホップの害虫とは?

ホップにとっての害虫はメイガの幼虫とハダニです。
ま、「害虫」というのも「雑草」と同じく、人間の都合であることは重々承知の上ですが、ご退散いただかなくてはなりません。これも良いホップ、良いビールのためですから。

ホップのツルの中にメイガの幼虫が食入しすると、そこから先は全て枯れてしまいます。
ハダニが大量発生すると、数日で葉や毬花が褐変してしまうことになります。

メイガの幼虫が入って枯れたツル。中央に幼虫の姿が見える。粉状のものは幼虫のフン。

 

メイガの幼虫が入ったホップのツル。赤い豆状のものはサナギ。

与謝野の場合、テルスターやパダンといった殺虫剤を使っています。
水溶液を散布しますが、それぞれ「年間の使用回数」や「使用後〇〇日間は摘果できない」などの決まりがあるので、計画的に使う必要があります。

*面積あたりの使用量、希釈率、使用回数や期間の限度はそれぞれの薬品によって違います。ラベルに書かれているので厳守しましょう。

参考:テルスター(別サイトへ遷移します)

参考:パダン(別サイトへ遷移します)

ホップの病気とは?

ホップの病気で最も大きいのが、ベト病です。
ベト病はカビ菌によっておき、キュウリやブドウといった農作物でも大きな被害が出る病気です。
ベト病にかかるとホップの葉や毬花は茶色くなって枯れてしまいます。

また、主茎や側枝の先が枯れてしまい成長しません。
ベト病の恐ろしい所は、分生胞子が風によって飛ばされて広がっていくことや、茎や葉が枯れて落ちると地中で越冬するなんてこともあるからです。
最悪の場合、連鎖が止められなくなり、圃場が全滅するなんてことになりかねません。

与謝野の場合、まずは株の根元の無駄な新芽や葉を切り取り、雑草をしっかりと刈って風通しを良くします。
また、ベト病の恐れがある部分(斑点が出た葉など)を見つけたら切り取って処分します。

さらに、ユニフォームという顆粒状の薬剤を株の根元に撒き、ランマンフロアブルやコサイドという水溶液の薬剤を散布し、予防しています。

これらも、それぞれ「年間の使用回数」や「使用後〇〇日間は摘果できない」などの決まりがあるので、計画的に使う必要があります。

*薬品は面積あたりの使用量、希釈率、使用回数や期間の限度はそれぞれの薬品によって違います。ラベルに書かれているので厳守しましょう。

参考:ユニフォーム(別サイトへ遷移します)

参考:ランマン・フロアブル(別サイトへ遷移します)

参考:コサイド(別サイトへ遷移します)

では、また季節が変わるころに,,,

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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