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コラム

来年の準備をしよう〜藤原ヒロユキのホップ栽培日記〜

摘み逃してそのまま枯れてしまった毱花。

最近、ホップを育ててみたい。という人が増えてきています。
私の住む与謝野町にも各地から視察の方がお越しになられます。

京都府与謝野町では、2015年からホップ栽培を始め、2018年からは私自身もホップ圃場を開設し本格的にホップを栽培しています。

1年間を通して、私の栽培日記が皆さんのホップ栽培のヒントになれば幸いです。

与謝野ホップも収穫シーズンを終え、ひと段落の気分になっています。
前回でも書きましたが、今年は去年に比べ収量が落ちてしまいました。

その結果、一部の品種は品切れとなり、ご注文をいただいた量のホップを提供できなくなってしまいました。申し訳ありませんでした。

ホップのシーズンは終わりましたが、春に向けて色々とやっておかなければならないことがあります。

収穫の方法によって違うツルと葉の処理

ホップは毬花が重要なので、収穫した後のツルと葉は不用品になります。
このツルと葉はどうするのでしょうか?

その処理方法は、【ツルを切り落として毬花を採る】のか【ツルを切り落とさず毬花を採る】のかによって変わってきます。

ツルを切り落として毬花を採る場合

ツルを切り落として毬花を採る場合、毬花を機械で摘み取るか、毬花を手で摘み取るかの2パターンがあります。

この違いに関しては、7/15にアップした『ホップ栽培日記 ホップを摘もう!』に詳しく載っていますが、簡単に説明すると
・毬花がついたままのツルを摘果機に入れ、毬花とツルと葉に分ける。
・切り落としたツルから毬花を手で摘む。
の2パターンです。

ツルを切り落として機械摘み

ツルを切り落として手摘み

どちらのパターンにしろ、ツルと葉は青々とした状態のまま、一気に大量の「不用品」となります。

ツルを切り落とさず毬花を採る場合

ツルを切り落とさずに手摘みする場合は、ツルと葉はホップ畑に残っています。
このツルをいつ処理するのか?

まだ株自体が若くて成長しきっていない場合は、光合成をさせて根を強くしたいので自然に枯れるまで放置しておいて良いでしょう。

害虫や病気の被害が多かった場合は、できるだけ早く刈り取ってしまうほうが無難だと思います。
どちらにしても、一気に大量のツルと葉が「不用品」となることは避けられます。

不用品となったツルと葉はどうするの?

ツルと葉は基本的には焼きます。
山積みにして自然に分解するのを待つこともできるのでしょうが、害虫や病気の件もありますので、焼いてしまいます。

この時に問題になるのが、紐です。
可燃性の紐であれば問題ないのですが、麻紐などの自然素材は強度の問題から使うのが不安です。

自然素材の紐を使っている地域もあると聞きますが、与謝野では使っていません。
ですから、ツルと紐を手作業で分けています。

ツルとヒモを分ける作業は思いのほかしんどい仕事です。

シューっと上から下まで引き抜くことができれば楽なのでしょうが、残念ながらそう上手くはいきません。ツルがヒモに絡みつきます。
短く切れば引き抜きやすいので、適度な長さに切ってツルと紐を分けています。

ツルを切る作業の写真は以下の通りです。

ツルの足元。各株から数本のツルが伸びている。

ツルをハサミで切る。

このあと、ツルの上側のヒモを切るまたは解く。

ツルにヒモが絡んでいる。このままでは燃やせないので分離する。

ツルは燃やし、ヒモは不燃物として処理する。

もちろん、ツルは個人で焼ける量ではないので町の処理施設にお金を払って処理してもらっています。

ツルや葉の利用法は無いのか?

ツルの利用法は、色々模索中です。
ツルを輪にしてリースにすることができます。
クリスマスに向けてホップ のリースなんて洒落てるじゃないですか。

枯れすぎてると折れてしまってリース作りはできないですね……。

染色に利用することも可能です。与謝野町でも一度実験してみたのですが、草木染めらしい淡い色合いになりました。

遠野市では、手すき和紙にする取り組みも行われています。​​

ただ廃棄するだけでは勿体無いので。今後ツルや葉は有効に使っていきたいと思っています。

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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