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ホップ生産者

フレッシュホップビールを楽しもう〜藤原ヒロユキのホップ栽培日記〜

枯れ始めたツルもあるなかに、しっかり実った毬花もある。

最近、ホップを育ててみたい。という人が増えてきています。
私の住む与謝野町にも各地から視察の方がお越しになられます。

京都府与謝野町では、2015年からホップ栽培を始め、2018年からは私自身もホップ圃場を開設し本格的にホップを栽培しています。

1年間を通して、私の栽培日記が皆さんのホップ栽培のヒントになれば幸いです。

前回の日記でも触れましたが、今年の与謝野は去年に比べ収穫量が落ちました。

なぜ落ちたのか?

与謝野ホップ生産者組合員で意見交換したところ「湿度が例年より高かった」「大雨が何度かあった」などの意見が出ましたが、決定的な理由はまだわかっていません。
この件は今後もデータなどと照らし合わせて検討していきたいと思います。

ちなみに、私の圃場に関してですが、収量が減った原因ははっきりしています。
それは、株数を減らしたからです。

昨年まで320株あったのを、今年は240株に減らしました。
減らした理由は、作業効率の問題と、もともと株間が詰まりすぎていたからです。

ですから、収量が減るのは想定内でした。
現在、「想定していた収量」の1割減なので、もう少し粘って収穫すれば想定通りの収穫量に近づけるのではないかと思っています。

収量が減ったもうひとつの原因は、害虫が去年より多かったことだと思っています。
メイガに関しては以前から注意はしていたのですが、マメコガネは去年まで気にしていなかった害虫でした。
とんだニューフェイスです。
マメコガネに関してはフェロモントラップがよく効いたので、来年はもっと早めに仕掛けようと思っています。

さらにもうひとつは、イブキの側枝カットを大胆に行えなかったことだと考えています。ツル下げもほとんど行わなかったのも原因のような気がします。

7/13に大雨警報が出るほどの雨が降ったあと、まったく雨が降っていないのも原因のひとつなのかもしれません。
ホップは雨が多いと根腐れをおこす植物ですが、水がなくても育つ植物ではありませんし……。

本当、ホップ栽培は難しいですね。
毎年勉強です。

さて、今回の本題に入りましょう。
いよいよ【フレッシュホップビール】が各醸造所から発売される季節が始まるというお話です。

今年もフレッシュホップビールが発売される季節になりました。

フレッシュホップビールとは

ところで、フレッシュホップビールとはどのようなビールなのでしょうか?
定義はあるのでしょうか?

世界最大のビールコンペティション「ワールドビアカップ(WBC)」に【フレッシュホップビール部門】が登場するのは2014年からです。

ちなみに、2014年から2017年までは【Fresh or Wet Hop Beer】、2018年から【Fresh Hop Beer】というカテゴリー名になっています。

2014年版のビアスタイルガイドラインはこちら

2018年版はこちら

最新の2023年版はこちらでご覧いただけます。

まず興味深いことは、当初はあった【Wet Hop】という言葉が2018年からなくなっていることです。

Wet Hopを日本語に訳すのは少し難しい気がしますが、undried (“wet”) hopsとなっていますのでここは【未乾燥ホップ】で良いかと思います。

また、カテゴリーが生まれた2014年からすでに、fresh (newly harvested and kilned) and/or undried (“wet”) hops. と書かれており、freshの概念の中にkilned(窯で乾燥させた)ものも含まれているということになります。

2018年版では​​​​​​、さらに解釈が広がり【収穫したての新鮮なホップ、未乾燥ホップまたは冷凍ホップや粉砕されたもの、「新鮮に乾燥させた毬花やペレット」を使って醸造されたビール】とされ、Wet Hopという言葉はなくなっています。

2023年版を見ると、もはや細かいことには触れず【未加工、冷凍、窯によって乾燥された】ホップによって【非常に高いホップのアロマとフレーバー】が求められていて、それらには花やシトラスやフルーツだけでなく、日本ではネガティブに感じられている、硫黄、ディーゼルオイル、オニオンやガーリック、猫、樹脂といった言葉も列挙されています。

日本では2015年に代官山の「スプリングバレーブルワリー」で「フレッシュホップフェスト2015」が行われ12のブルワリーが参加しています。世界的に見ても、先進的なフェストと言えますね。

初回はあえて「第0回」となっています。

フレッシュホップビールは、定番+ニューハーベストの時代

フレッシュホップと言えば、日本では「今年採れたホップで造られたビール」という印象が強くなっています。
しかし、WBCのスタイルガイドラインを見ると、「今年採れたホップ」にこだわるものではないと考えられます。

もちろん、WBCのスタイルガイドラインが絶対的な聖書だとは思いませんが、世界57ヶ国から1万以上のビールがエントリーするコンペティションの基準はグローバルスタンダードのひとつではないでしょうか。

フレッシュホップビールとは、ホップのフレッシュな魅力がふんだんに表現されたビールであり、そのホップが今年採れたホップ=ニューハーベストホップかどうかは問われていないのです。

と言うのも、「今年採れた=ニューハーベスト」にこだわるとフレッシュホップが【シーズナルビール】になり、一過性の物になってしまう可能性があるからです。

未乾燥のホップを摘んだその日のうちに真空冷凍すれば、その新鮮さは数年保ちますし、1年中いつでも使える物になります。

また、前回の栽培日記でも書きましたが、蒸留によりホップ水やホップオイルを作ることもできます。

もちろん、【ニューハーベストホップビール】には、収穫を祝う気持ちや、その年のホップの出来栄えを楽しむ魅力があります。

しかし、1年を通して多くの人に【新鮮なホップ=未乾燥のホップ】の香りや味わいを広く楽しんでもらうには、冷凍やホップ水やホップオイルなどを使った【定番ビール】になっていくことが必要ではないでしょうか?

【フレッシュホップの定番ビール】があり、さらに「今年採れたホップ」を使った【ニューハーベストホップビール】がある。といった楽しみ方があって良いのではないでしょうか?

新蕎麦の季節だけしか蕎麦が食べられない。なんてつまらないと思いませんか?
どんな季節でも【フレッシュホップビール】を楽しもうではありませんか。

フレッシュホップの定番ビール

ニューハーベスト、定番。どちらも楽しみたい。

「フレッシュホップ」から「JAPAN HOP」へ

「フレッシュホップ」が「ニューハーベストホップ」から「通年使われるホップ」になることは、「日本産ホップ」のさらなる普及にも繋がっていくと思われます。

ビールの原料の国産比率はまだまだ伸びていませんが、日本らしいビールを創るためにも「日本産ホップ」をもっと一般的にしていく必要があると考えられます。

JAPAN HOP の可能性を高め、多くのビールに使ってもらい、全国のビールファンに飲んでもらいたいと願っています。

では、また季節が変わるころに,,,

2023年日本産ホップ&フレッシュホップビールをぜひ登録していただき、後世のために記録として残しておきましょう。
登録はこちらから!

 

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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