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ホップ生産者

ホップを摘もう!〜藤原ヒロユキのホップ栽培日記〜

2023年7月14日に摘花したカスケード@京都与謝野 藤原ヒロユキホップ

最近、ホップを育ててみたい。という人が増えてきています。
私の住む与謝野町にも各地から視察の方がお越しになられます。

京都府与謝野町では、2015年からホップ栽培を始め、2018年からは私自身もホップ圃場を開設し本格的にホップを栽培しています。

1年間を通して、私の栽培日記が皆さんのホップ栽培のヒントになれば幸いです。

前回、ホップの「摘みごろ」についてお話ししました。
詳しくはこちらをご覧ください。

地域によって時期は違いますが、ホップの収穫シーズンが始まりました。
与謝野は特に早く、今年の場合、6/7には初摘果を行なっています。
その後も摘果は続き、8月末くらいまでは続くことになります。

俳句で「ホップ摘み」は「初秋の季語」とのことですが、私の感覚では「盛夏の季語」ですね。
暑い日の、ホップの摘みは、過酷な作業ですが、美味しいビールのために頑張っています。

6/1にアップした「ホップを守ろう」編​​​​で害虫のお話をしました。
ホップにはメイガやハダニといった虫がつくと書きましたが、最近、新たな害虫が暴れています。

それは、マメコガネという名の甲虫です。
ホップの葉と毬花を食べます。食べられてしまった毬花は茶色くなって商品価値がなくなってしまいます。

マメコガネ。キラキラして綺麗だが、ホップにとっては害虫。

 

マメコガネに食われたホップの葉。

 

葉だけでなく、 毬花も食べてしまう。食べられると茶変して商品価値が無くなる。

退治したいのですが、すでに摘み取りが始まっているので農薬は使うことができません。
そこで、フェロモン・トラップを仕掛けました。
フェロモンを利用してマメコガネをおびき寄せ捕まえるという方法です。

マメコガネ用のフェロモン・トラップ。フェロモンでマメコガネをおびき寄せ底に落ちると出られなくなる。

 

仕掛けて数日で、トラップの底が見えなくなるほどの量のマメコガネが捕まりました。

ホップを摘む方法は機械摘みと手摘みの2種類

ホップは毬花、さらに言えばその中のルプリンが重要で、葉やツルは不必要です。
ホップの収穫は毬花を摘み取るということに他なりません。

毬花の取り方は【機械摘み】と【手摘み】に大別できます。
機械摘みは、ツルごと棚から切り落とし、摘果機に入れて毬花をふるい落として分別するという方法です。

それに対して手摘みは1粒1粒、手で摘んでいきます。
手摘みにも2種類あって、『ツルを棚から切り落としてから手で摘む』方法と『ツルを切り落とさずツルから摘み取っていく』方法です。

機械摘み。ツルを切り取り摘果機で毬花を分別する。

手摘み①。ツルを切り落とし、地上で手によって毬花を摘み取る。

手摘み②。ツルは切り落とさず、高所で手によって毬花を摘み取る。

機械摘みと手摘みの違いは?

機械摘みと手摘みの違いにはどのような違いがあるのでしょうか?

機械摘みは一度にたくさんの毬花を短時間で摘むことができます。
大型農場ならばこの方法がベストです。

機械摘みの問題点は毬花が痛むということです。機械の力でふるい落とすので、仕方がないことです。
機械摘みと手摘みの両方を行なっているホップ農家の方にお話しを伺うと、摘果して数時間すると痛んだ部分から劣化が進み、明らかな違いが出てくるとのことです。
ですから、機械摘みの場合はすぐに毬花を乾燥させたり、冷凍する必要があると考えられます。

もうひとつ、機械摘みで懸念されることはひとつのツルの中に早熟と旬と過熟した毬花が混在している場合です。

ツルの中に成長の違った毬花がある場合、ツルを切り落とす方法は未熟や過熟が混じってしまう。

出来るだけ均一に育てようとしても、やはり差は出てくるものです。
この問題は、乾燥させたあとペレットにすることで平均化できます。

ツルを切り落とす手摘みとツルを切り落とさないて摘みの違いは?

さて、先ほど「手摘みにも2種類ある」と述べましたが、その違いも検証しましょう。

まず、『ツルを切り落とす手摘み』は、機械摘みと同じように収穫は1日で済ませることができます。
高所作業も無く安全です。

懸念は、ひとつのツルの中に早熟と旬と過熟した毬花が混在している場合です。
畝の中に成長が違うツルが混在している時も同じです。
出来るだけ均一になるように育てたいものですが、やはりズレは生じます。
乾燥させてペレットにすれば平均化しますが、生ホップのまま使用したい場合は悩みどころです。

それに対して『ツルを切り落とさずツルから摘み取っていく』方法は、毬花を痛めることなく、旬の毬花だけを摘み取ることができます。
最も良い状態のホップだけを選別して摘むことができます。

しかし、摘み取りは何日も続き、とても大変です。与謝野町の場合、収穫は1ヶ月以上続きます。
慣れた人が最も採りやすい条件(天候や実り具合)でも1時間に2kg程度(未乾燥重量)しか摘むことができません。1日に1人で10kg以上摘める日など滅多にありません。
そのため、旬を取り逃がし過熟させてしまい収量が落ちることがあります。

さらに、ツルを切り落とさずに摘むため、高所で作業するため危険も伴います。

高所作業は危険も伴うので細心の注意が必要。

1日にまとまった量が採れないので乾燥機にかけるのも難しいため、未乾燥の生ホップを真空パックして冷凍するのが一般的です。冷凍庫のキャパシティや電気代もバカになりません。
手摘みの未乾燥ホップはとても手間がかかります。

ホップ摘みスタイル

ホップのツルはトゲトゲしています。
半袖はお勧めしません。ホップのツルに引っ掻かれて痒くなります。
肌の弱い人はミミズ腫れになることもありますよ。
長袖のシャツか半袖ならばアームカバーが必須ですね。
手袋もあると良いでしょう。

暑いので短パンを履きたい気持ちはわかりますが、ホップ畑には蚊やアブやダニなど人を刺す虫もたくさんいます。(どうしても短パン! ということであれば下にスパッツを履くことをお勧めします)
虫除けスプレーを使うのも良いですね。

日よけにつばのある帽子を被ってください。
ポールがあるので頭をぶつけることもあるので無帽は無謀です。
高所作業車に乗る場合はヘルメットをかぶると安全です。

サングラスも必要です。
夏の日差しをなめてはいけません。
首筋(特に後ろ側)を日焼けから守るため襟を立てるのも良いですよ。
日焼けしたくない人は日焼け止めクリームを活用してください。

水分補給も忘れずに。塩分を含む飴などもあると良いですね。

摘んだホップを入れておく袋も用意しておきたいものです。
果樹園などで使う摘果袋が便利です。レジ袋も利用できます。

足元はスニーカーやトレッキングシューズ、長靴で。
サンダルやハイヒールなどはNGです。

日焼けだけでなく、虫やホップのトゲトゲから皮膚を守るため長袖シャツやアームカバー、長ズボンがお勧め。

ホップ摘みはホップ栽培最大のイベントです。
楽しんでください。

与謝野でホップ収穫祭開催!
与謝野では7/22(土)、7/29(土)、8/5(土)に「ホップ収穫祭」を予定しています。

ホップ収穫のあと、丹後鉄道「与謝野」駅前に新設された「丹後屋醸造タップルーム」での懇親会や藤原ヒロユキのホップトークなどが予定されています。

ご興味のある方、以下のURLで異彩をご覧ください。
与謝野町観光協会ウェブサイト
https://yosano-kankou.net/yosanohop/
※7/22の申し込みは終了しました。

与謝野で一緒にホップ摘みしましょう!
お待ちしています。

では、また季節が変わるころに,,,

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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