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コラム

藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町 道具編
その②「株開き、株ごしらえに必要な道具」

最近、ホップを栽培してみたい。という人が増えてきています。
私の住む京都府与謝野町にも視察の方が各地からお越しになられます。

そんな方々を含め、ホップ栽培を始めようという人に参考にしていただきたいという願いから、去年2023年は「藤原ヒロユキのホップ栽培日記 in 与謝野町」という連載コラムを書きました。

その連載コラムに引き続き、今年2024年は、「どのような道具が必要なのか? どのような服装が適切なのか?」というテーマで解説していきたいと思います。

前回はホップ栽培の服装について書きましたが、今回は【株開き】と【株ごしらえ】に必要な道具を紹介したいと思います。

株開き・株ごしらえとは

ホップ栽培で最も過酷な仕事は【株開き】と【株ごしらえ】だと感じています。
株開き・株ごしらえをしなければ【ホップを知る】ことができないと思います。
あなたが胸を張って「私はホップを育てています」と言いたいのであれば【株開き・株ごしらえ】を会得する必要があります。
【株開き・株ごしらえ】をせざる者、ホップ栽培者にあらず! とすら思っています。(笑)

さて、それでは【株開き】と【株ごしらえ】とは具体的にどのような作業なのでしょうか?

ホップは多年草なので毎年植え直す必要はありません。
去年の株からまた新しい芽が出てきます。
種を撒いたり、苗を植える必要が無いので「楽だ」と思う人がいるでしょう。

ところがそれは、とんでもない勘違いです。
ホップは1年間で驚くほど根を広げ、新しい芽を出そうとします。

昨年植えたホップを掘り返すと、1年でここまで根と芽を広げていることがわかります。

地下で広がる根や芽をそのまま放置すると、途方もない数の芽が出て、それぞれが細く伸び、小さな毬花をつけることになります。
それを防ぐため、毎年、株をあらかた掘り起こし、地下で広がろうとする根と芽を剪定する必要があるのです。

この『株を掘り起こす作業』を【株開き】、『根や芽を剪定する作業』を【株ごしらえ】と呼びます。

株開きは【粗い株開き】と【細かい株開き】の二段階

株開きのスタートは、【粗い株開き】です。
もちろん、ひとつずつの株をゼロから完全に開いていくこともできます。
株数が少ない圃場ならば、それで良いかと思います。

しかし、株数が多い圃場では【周辺の土を掘る=粗い株開き】と【根や芽に絡みついた土を丁寧に取り除く=細かい株開き】を分けて行うほうが効率的です。

ホップは土の中で根や芽を広げています。

粗い株開き。株の周りを掘り起こします。

株開き。株を露出させます。

株ごしらえ。芽や根を剪定します。

【粗い株開き】に必要な道具は?

【粗い株開き】とは、株の周りを掘り起こす作業です。
この作業に便利なのは【備中鍬】と呼ばれる、先が三本または四本の鍬です。

先が三本または四本に分かれている備中鍬。

【粗い株開き】で備中鍬を入れる場所は、先シーズンに芽が出た場所の周辺です。
芽が出た中心部からドーナツ状に土を退けます。

鍬を入れる方向は、中心部から外ではなく横へ横へです。
力任せに掘り起こすのではなく、絡まった髪の毛をクシでとかしていくイメージです。

粗い株開きは、去年芽の出たところから少し離れたところを掘っていきます。

なお、広大なホップ圃場の場合(特に海外などでは)、この作業を専用の重機やユンボなどで行うこともあります。

【細かい株開き】に必要な道具は?

【細かい株開き】とは、土の中の根や芽の周りの土を綺麗に取り除く作業です。
この作業をしっかりやっておくと、次の【株ごしらえ】がとても楽になります。

この作業で活躍するのが、【一本爪レーキ(片手鍬ピッケル型)】、【根かき熊手一本爪】、【ブロワー】です。

一本爪レーキ。片手鍬ピッケル型とも呼ばれています。

根かき熊手一本爪。二本爪や三本爪もありますが、根や芽が絡まるので一本爪の方が使いやすいです。

 

一本爪レーキ(片手鍬ピッケル型)の両側をうまく使って土をかき出します。

 

根かき熊手一本爪で土をしっかり取り除きます。

他には、【ブロワー】で土を吹き飛ばすのも有効です。

大まかに、土を払いのけることができます。土質によっては、使いにくい場合やこの動画以上に土を吹き飛ばせることもあります。

【株ごしらえ】に必要な道具は?

【株ごしらえ】は、掘りおこした根や芽を切っていく作業です。
必要なのは、【剪定ハサミ】と【鎌】です。

【剪定ハサミ】は廉価すぎる物は避けたほうが良いでしょう。
根や芽を切る時に土も挟み込んでしまうので安いハサミだと刃が欠けてすぐに切れなくなります。

結果的に、引きちぎるような切りかたになってしまい、ホップにとって良くありません。

【剪定ばさみ】はしっかりとした物を選びたいです。

鎌は一般的な平たい刃の【草刈り鎌】と、刃がのこぎりのようにギザギザしている【のこぎり鎌】があり、どちらを使っても問題ありません。
以前、私は【のこぎり鎌】を使っていましたが、今は【草刈り鎌】を使っています。

【草刈り鎌】(右)と【のこぎり鎌】2本。

【草刈り鎌】は、刃に角度がついている物のほうが芽を切りやすいのでお勧めです。

刃に角度がついていると芽を水平に切りやすいです。

株ごしらえ前。

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株ごしらえ後。

なお、【株ごしらえ】をする際は、一株ごとにハサミや鎌をアルコール消毒するように心がけたいです。
これは、病気が伝染ることを防ぐための用心です。
私の場合は、株が変わるごとにハサミと鎌にアルコールをスプレーしています。

また、ハサミや鎌はすぐに切れなくなるので、ちょっと「切れにくくなってきたな」と思うたびに、シャープナーでシュシュっと研ぐことにしています。

シャープナー。ハサミや鎌の切れ味が悪くなったと感じたら、その場で研ぎましょう。

株の埋め戻しに必要な道具は?

【株ごしらえ】が終わったら、2〜3日くらいそのままにして切り口を落ち着かせてから埋め戻します。
この時に必要なのが【平鍬】や【シャベル】です。

埋め戻しに便利な【平鍬】は畝立てにも使えます。

埋め戻しには、先が尖っていない直線的な【シャベル】が使いやすいです。

【平鍬】や【シャベル】を使って株に土を被せてあげましょう。

では、また!

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ビール評論家・イラストレーター・ホップ生産者

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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