ホップの質を上げよう。〜藤原ヒロユキのホップ栽培日記〜
最近、ホップを育ててみたい。という人が増えてきています。
私の住む与謝野町にも各地から視察の方がお越しになられます。
京都府与謝野町では、2015年からホップ栽培を始め、2018年からは私自身もホップ圃場を開設し本格的にホップを栽培しています。
1年間を通して、私の栽培日記が皆さんのホップ栽培のヒントになれば幸いです。
今回はちょっと余談から。
先日、【チェコ産ホップ】のプロモーションセミナーに出席しました。
私の認識では「チェコ産のホップは上品でノーブルなキャラクター」だったのですが、それだけではないということを知りました。
もちろん、多くのチェコ産ホップはザーツに代表されるようにノーブルなものですが、カズベックという品種はまるでアメリカ産ホップのようなシトラス系のアロマとフレーバーでした。
コンペティションにこのホップを使用したビールが【ボヘミアンビールのカテゴリー】にエントリーされていたら、私は「アメリカ産のホップが使用されているのでアウト・オブ・カテゴリーです」とジャッジし、選外にしていたでしょう。
カズベックのようなホップがチェコでも育てられているということは、それだけ【シトラス系ホップの需要】がチェコやヨーロッパでも高まっているということだと思います。
世界のHop Mapは刻々と書き換えられているということを改めて知ることとなりました。
今後、【日本産ホップ】もしっかりとした立ち位置を築いていきたいと感じました。
さて、それではここから本題です。
今回は土壌や肥料でホップの質を上げよう。というお話をします。
土壌のpHは? 酸性? アルカリ性?
ホップに限らず、どんな農作物にも土壌の良し悪しは重要です。
土壌の良し悪しには様々な要因が絡んできますが、まずは、土壌のpHについて考えたいと思います。
土壌の最適pHは、植物の種類によって違いますが、ホップの場合はpH6.5〜7と言われています。弱酸性〜中性ですね。
雨に空気中の二酸化炭素が溶け込んでいるので、土壌は放っておくと酸性になっていきます。なので、石灰などを撒いてpHをあげる必要があるのです。
pHの測定は、専門機関に依頼するのが最も正確ですが、測定器も市販されているので大まかな目安として使用するのも良いでしょう。
参考:PH測定器例(別サイトへ遷移します)
肥料をあげよう
どんな農作物にも肥料は必要です。
私たちも水だけでは生きていけないようにホップにも栄養を与えてあげなくてはなりません。
私の場合、3月に鶏糞、BMようりん、有機石灰や苦土石灰などを撒きます。
私のホップ畑は1,470平米で、今年は鶏糞285kg、BMようりん80kg、有機石灰240kgを撒きました。
鶏糞は文字通り「鶏のフン」から作られる肥料です。
今年は鳥インフルエンザの影響で鶏が殺処分されたこともあり鶏糞も品薄になり高騰しました。
BMようりんは、リン酸、苦土、ケイ酸、ホウ素、マンガンが主原料の肥料です。
有機石灰はアルカリ性のため、酸性化した土壌のpHを改善してくれます。
参考:鶏糞一例(別サイトへ遷移します)
参考:BMようりん一例(別サイトへ遷移します)
参考:有機石灰一例(別サイトへ遷移します)
そのあとは、4月に高度化成14-14-14を200kg、5月に苦土石灰120kgと高度化成14-14-14を80kg追肥しました。
高度化成14-14-14とは、チッソ、リン酸、カリの成分割合が均等(全重量のx0.14%。20kg袋なら各2.8kg)ということです。
14-14-14の他に8-8-8、7-5-5、6-10-5、6.5-6-19など様々なバランスのものがありますが、私の場合は14-14-14を使っています。
ホップの施肥量の比率は1:1:1.2〜1.4ということなので、欲を言うとカリを少し単肥で足してやると良いでしょう。
今年は、硫酸カリを40kg撒いてみました。これは初めての試みなので、結果が楽しみです。
苦土石灰は、有機石灰に比べてアルカリ度が高く、マグネシウムも加えられています。
参考:高度化成14-14-14一例(別サイトへ遷移します)
参考:苦土石灰一例(別サイトへ遷移します)
参考:硫酸カリ一例(別サイトへ遷移します)
なお、肥料は粉状のものより粒状のもののほうが風で飛ばないのでおすすめです。
畝の肩の部分に筋状に撒いたあと、土を混ぜると良いですね。
チッソ、リン酸、カリは、なぜ必要?
さて、それではなぜ高度化成14-14-14を撒く必要があるのでしょうか?
チッソ、リン酸、カリはそれぞれどんな働きをしているのでしょうか?
チッソは不足すると葉が小さくなり主茎や側枝の伸びも悪く、毬花も小さくなります。しかし、多すぎると葉が茂り過ぎて葉擦れやべと病などの原因になります。
リン酸が不足すると、同じく葉が小さくなり毬花内のルプリンが少なくなると言われています。
カリはチッソやリン酸以上に重要で、不足するとホップ全体の生育が悪くなりルプリンも少なくなってしまいがちです。また、べと病などカビ系の病気に対する抵抗力が弱くなります。
*与謝野のホップは他の地域よりも開花や収穫時期が1~2ヶ月近く早いので、肥料を撒く時期はそれぞれの地域に合わせて変えてください。
では、また季節が変わるころに,,,
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