日本産ホップの新しい価値を創出!Z世代が考えるホップの新しい魅力
2023年7月21日にサッポロビールが開催した「日本産ホップの新価値創出マーケティング発表会」に参加しました。この発表会は、ビールの更なる魅力を発見するために、日本産ホップを題材にサッポロビールと青山学院大学の学生が連携し、日本産ホップの新しい価値を創出しようという取り組みです。
発表は、同大学でマーケティングを専攻する学生が3人ずつ6チームに分かれて実施。学生とサッポロビールの担当者は、4月から準備を開始し、互いに議論を重ねたうえで、最終発表日を迎えました。この記事では、Z世代が考えるホップの新しい魅力について、最優秀賞、優秀賞、特別賞を受賞した発表内容を中心に紹介します。
Contents
日本産ホップの新しい価値とは?
ホップは、ビールに苦味と香りを与える植物で、ビールの醸造には欠かせない主要な原料です。世界中には、300種類以上のホップの品種があると言われています。日本でも東北や北海道で日本産ホップの栽培が行われていて、一般的に栽培されているホップは17品種あります。
サッポロビールは、1870年代ごろからビールの原料であるホップの栽培と育種開発を続けてきました。同社には、ソラチエースや信州早生、リトルスターという日本で開発された品種のホップがあります。しかし、日本で醸造されるビールの大半は海外産のホップを使用しているため、日本国内で栽培されている事実を知らない人が圧倒的に多いのです。
またホップは、ビール以外の利用方法があまり多くありません。そのため、日本ではなじみが薄いという課題がありました。
なぜ青山学院大学が選ばれたのか?
青山学院大学とサッポロビールのつながりはとても古く、1870 年代に遡ります。当時、北海道開拓を掲げる「開拓使」が国産原料の試験農地として選んだ場所である東京官園(とうきょうかんえん)が、現在の青山学院大学青山キャンパスです。
東京官園は、明治時代初期に北海道開拓を推進するために設立された日本政府の農業試験場です。そして、開拓使が官営事業の一つとして興した「開拓使麦酒醸造所」が、現在のサッポロビールの前身になっています。
これらの縁もあり、サッポロビールと青山学院大学が連携し、ビールの原料であるホップの新しい価値を創造する取組みが行われました。
それでは、早速受賞したホップの活用アイデアを紹介します。(これらの発表内容のホップに関する効果効能や実現可能性についての検証は行っていません)
特別賞は花粉症対策アメ「たたかうHOP」〈チーム名:ホプテピピック〉
特別賞を受賞したのは、花粉症対策アメ「たたかうHOP」の提案をしたホプテピピックチームです。このチームは、ホップフラボノール配糖体を含有するホップ水抽出物に着目。これが鼻水やくしゃみなどの症状を和らげる効果が期待されると言われていることから、花粉症のアメに応用することを提案しました。
このチームの現状分析として、ホップがあまり知られていない原因は、認知不足と馴染みのなさであると推測。そこで、国産ホップが持つ価値に着目しこの企画を考えました。
国民病である花粉症に着目
日本における花粉症患者数は、推定3000万人で年齢を問わず悩まされています。その対策として薬を服用した場合、眠気等の副作用が生じる課題が挙げられます。そこで、ホップ水抽出物の成分をアメという切り口で製品化し、薬の副作用である眠気を伴わずに花粉症の症状が緩和できるのではないかと提案しました。
プロモーション施策としては、YouTube、TikTokを使用した同世代に刺さる動画広告や、知名度をあげるためにSNSのハッシュタグを活用したアイデアを発表。デジタル施策だけでなく、駅構内の壁面を利用した広告や、飲食店レジでアメを配布するなど、さまざまな発想が散りばめられた内容でした。
ビールを飲まないZ世代にホップの認知を拡大させるために、国民病である花粉症に着目し、課題解決に向けてアプローチをした点が面白かったです。毎年花粉症で苦しんでいる私は、コンビニでたたかうHOPを見つけたら絶対買うだろうなと思いました。
優秀賞 ホップを使ったスナック菓子〈チーム名:趣味食事〉
当初は、特別賞と最優秀賞の2つのみの予定でしたが、発表のレベルがとても高く、甲乙つけ難いということで、優秀賞が急遽設けられました。
優秀賞は、趣味食事チームのホップを使ったスナック菓子です。このチームは、発表の演出が素晴らしかったです。商品が容易にイメージできるパッケージを自作しました。
ビールに関するアンケートの結果は?
この商品を考案する前に、①同世代にビールが好きかどうか、②ビールが苦手と答えた人にビールを飲めるようになりたいか、③ビールが苦手で困った経験があるか、④ホップを知っているかなどのアンケートを行いました。
すると、お酒が好きな若者は多いが、ビールは嫌いという回答が約半数を占める結果に。ビールは苦手だけど飲めるようになりたい、飲めないけどみんなで一緒に楽しみたいという人がいることも判明しました。
そこで考えたのが、ホップを使ったスナック菓子です。ビールを飲まなくても、おつまみは買うという若者が多いことから、ナッツやチーズ、ベーコン、チョコとホップをそれぞれ組み合わせたスナック菓子4種類を提案しました。
シェアしたくなるスナック菓子とは?
さらにアンケートを重ねて、自分が買ったお菓子をSNSであげるなら、どういう時か質問。見た目が魅力的だった時にシェアするという回答が多数寄せられました。
これらをヒントにして、発案したのがくるくる回すとスナック菓子が出てくるパッケージです。周囲でくるくる回していると気になって自分も試したくなる、という心理を想定してユニークなパッケージを提案しました。
実際、会場でも話題になり、今回新しく賞まで設けられました。これなら、若い世代のみならず、ビール好きもSNSで拡散したいと思うインパクトのある商品でした。
最優勝賞 ルームフレグランス「Kanpai」〈チーム名:チームらっこ〉
最優秀賞は、チームらっこが提案した日本産ホップを使用したルームフレグランスです。現代人が抱える不眠の課題をホップの特徴を活かして解決できないかという提案内容でした。
ドイツ保健当局では、ホップが穏やかに神経に作用する点を上手に活用し、不安や睡眠障害の不快感を緩和する目的でホップの使用を承認しています。また、乾燥したホップを小さい袋に入れて枕元に置くことで睡眠を誘導できるとヨーロッパの事例を交えて紹介。
サプリメントやドリンクの商品化も検討しましたが、習慣化させるのが難しいと考えました。これらの点に着目し、ルームフレグランスを発案しました。
キャッチコピーは「自分に乾杯」
「乾杯をもっとおいしく。」というサッポロビールのキャッチコピーを活用し、自らを労う「自分に乾杯」というフレーズを考案。つまり、仕事を終えて飲む一杯のビールと同様に、眠る前に至福の瞬間を与えてくれるワンプッシュをイメージして提案しました。
プロモーション施策は、他のグループ同様にSNSを活用。特に興味深いのが、山手線の電車を車体広告として利用するアイデアです。ここで、日本産ホップについて紹介し、認知度を高めて製品に興味を持ってもらおうと画策しました。
睡眠の質を高めるためにホップを使用するとなると、サプリメントやドリンク剤など、食品で活用することを考えがちですが、敢えてルームフレグランスを提案した点が斬新だなと感じました。
私も寝る前にラベンダーや柚子など、いろいろな香りを枕元にスプレーします。ソラチエースやリトルスターなどのホップの香りがあれば、夢の中でも美味しいビールが楽しめそうです!
今後の日本産ホップの新しい価値創造に期待!
入賞しなかった発表も着眼点がユニークで、改良を重ねることで具現化できるのではないかと期待が膨らみました。また、今回はマーケティングを専攻している学生のみが参加しましたが、例えば、農学部など、植物としてホップを捉えて新しい価値を想像するなど、異なる専門の学生がチームを組むとさらに面白い取り組みになりそうです。
ホップはビールに使うことが当たり前で、それ以外の活用方法はあまり思いつきませんでした。しかし、日本産ホップの良さを多くの人に知ってもらうには、そのような固定観念は捨てて、いろいろなアプローチの仕方を考えることが重要であると気付かされました。
日本産ホップの良さを追求し、どのように認知度を高めることができるのか、私自身も考えるきっかけになった素敵な発表会でした。
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