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コラム

「信州早生」を詳しく解説!100年以上の歴史を持つホップ

ビールの原材料は、麦芽、ホップ、酵母、水です。この中でビールに香りと苦味を与え、ビールの魂とも言われているホップ。現在、日本で使用しているホップの大部分は海外産の品種ですが、日本オリジナルのホップがあることをご存じですか?

この記事では、日本産ホップである「信州早生」の歴史、特徴を解説します。最後に信州早生を使用したビールを紹介しているので、飲みたくなったら参考にしてください!

100年以上の歴史を持つホップ信州早生

信州早生のホップの写真

信州早生のホップ 写真提供:ビアジャーナリスト古川人士さん

信州早生とは、1910年に開発が開始された日本オリジナルのホップ品種です。系統は、母本がドイツ産のホップ品種であるザーツで、父本が北アメリカ系のホップ品種であるホワイトバインを交配したものです。

これを交配育種と言い、系統の異なる品種同士を掛け合わせて、積極的に目的とする株を選出していく作業が行われていました。信州早生の交配育種は、北海道札幌に所在する山鼻ホップ園で始まりました。

当時、この交配育種を担当していたのが、大日本麦酒札幌工場の現場作業員として働いていた篠原武雄でした。大日本麦酒とは、現在のアサヒビールやサッポロビールの前身に当たります。

篠原は、1882年に長野県南佐久郡で生まれました。日露戦争出兵を経て、1908年に大日本麦酒に入社し、山鼻ホップ園で当時の門下生からホップの栽培や交配の技術指導を受けていました。

彼は、この新品種を故郷の長野県に持ち込んで試験栽培を実施。良好な結果が得られ、1971年に信州忽布(ホップ)と名づけられました。その後、同県の穂積村で大規模な契約栽培へと発展し、1919年に信州早生と改名されたのです。

信州早生の特徴は?

信州早生は、アロマホップといい、主にビールの香りづけに使われています。レモンのようなフレッシュで爽やかな香りと穏やかな苦味が特徴です。

ホップはつる性の植物で、生育を開始してから100日ほどで7〜8mに達します。そのため、通常ホップ棚と呼ばれるホップを巻きつけるための棚が設置されます。

ホップ棚

ホップ棚の様子

一般的なホップ棚は、一定間隔に支柱を立て、その頂点に横糸を張り、ホップの根株の近くに縄やひもを下げて直接つるを巻き上げさせる構造です。

信州早生は高さが5〜6mほどのホップ棚の上部まで伸びると、「つる下げ」という工程が必要です。つる下げとは、棚の上部まで伸びたホップのつるを3mほど下げる作業です。

これは、伸びたままのつるをそのまま放置すると、ホップの葉や実が上部に集中してしまい、日当たりや風通しが悪くなるため行われます。つる下げを行うことで生育を促進し、良質なホップを多く収穫することが可能になるのです。

このような栽培の工夫のもと、信州早生は日本向けに品種開発されたホップとして、その後100年以上も利用され続け、国産ホップを代表する品種となりました。日本の気候風土にあった品種であるため、海外産品種より栽培しやすいこともあり、国産のホップ品種としては一番多く栽培されています。

信州早生を使ったビールとは?

ここまで、信州早生の特徴を紹介しました。ここからは、信州早生のホップを使用したビールを2本紹介します。

山の上ニューイ

1本目は、ヤッホーブルーイングの山の上ニューイです。ヤッホーブルーイングは、長野県北佐久郡軽井沢町に本社を置くビール醸造メーカーで、よなよなエールやインドの青鬼など特徴のあるビールを販売しています。

ヤッホーブルーイング 山の上ニューイのビールをグラスに入れた写真

ヤッホーブルーイング 山の上ニューイ

山の上ニューイは、自社と同じく長野県にルーツを持つ信州早生を含む6種類のホップを使用したエールビールです。このビールのこだわりは、エッセンシャルホッピング(水蒸気蒸留法)と呼ばれる製法です。

エッセンシャルホッピングは、ホップを蒸留釜に入れて、下から熱湯で温めることで発生する蒸気を蒸留釜に送り込み、その香りを芳香水としてビールに添加しています。レモングラスなどのハーブや森林を思わせる爽やかな香りが楽しめます。

このビールは、長野県と山梨県のセブン・イレブンとヤッホーブルーイング公式通販サイトで購入できます。

山の上ニューイ
アルコール度数:4.5%
公式サイト:山の上ニューイ|ヤッホーブルーイング

ホップの水蒸気蒸留については、下記の記事をご覧ください。
ホップの水蒸気蒸留とは?ヤッホーブルーイングのホップ活用方法を紹介

Miyama Blonde

2本目は、志賀高原ビールのMiyama Blondeです。志賀高原ビールは、1805年創業の酒造会社で、2004年からビールの醸造を開始しました。所在地は、長野県下高井郡山ノ内町で、2006年からはホップを自家栽培しています。

志賀高原ビール Miyama Blonde

志賀高原ビール Miyama Blonde

Miyama Blondeは、ベルギーのセゾンビールをイメージして造られたビールで、自家栽培している信州早生と酒米を使用。ほのかな甘みと度数を感じさせない爽快な飲み口が特徴です。

Miyama Blonde
アルコール度数:6.5%
公式サイト:Miyama Blonde 330ml [商品番号 : 205] – 玉村本店

信州早生のフレッシュホップビール飲み比べてみよう

2021年にコエドブルワリーが醸造した信州早生を使ったフレッシュホップビール

2021年にコエドブルワリーが醸造した信州早生を使ったフレッシュホップビール

信州早生は、国内で栽培しているメリットとして、7〜8月の収穫時期に合わせて、摘み取った生のホップを使用したビールが醸造できます。紹介した2つの醸造所以外にも信州早生のホップを使用したビールが色々ありますので、ぜひ飲み比べて楽しんでください!

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ビアジャーナリスト

Hop Evangelist、Beer Judge、Beer Taster
ホップでビールを選ぶ時代に!を合言葉に活動中
全国各地のホップ畑にホップを摘みに行くほどのホップ好き
お気に入りのホップはシトラです♪

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