偶然ではなく必然、農業研修で渡米し帰国後ホップ栽培を始めた山家さんの夢
新潟県十日町市は、魚沼産コシヒカリの産地として稲作農業が盛んな地域で、信濃川、渋海川、清津川などの清流があり豊かな土壌が広がっています。この土地で代々続く米農家の後継者である山家(やまが)悠平さんは、2018年から米とホップの栽培を始めることになりました。なぜ米農家がホップを栽培することになったのか、その経緯についてお話を伺いました。
祖父が育てた米は皇室献上米に
山家家は十日町市で文政9年(1826年)江戸時代から連綿と続く米農家で、魚沼産コシヒカリと餅米、酒米を栽培しています。長年の栽培実績や米づくりでの取組みが評価され、1985年に皇室で行われた宮中行事「新嘗祭(にいなめさい)」で米を献上したこともあるそうです。
山家さんは、ゆくゆくは家業を継ぐことを念頭において、大学は農学部を選択、さらに大学院へも進学し水田土壌の研究を行っていました。卒業後は、アメリカ系の化学会社や中国系の貿易会社で働いていましたが、30歳の時に農業や教育・観光の分野で地元に貢献したいと思い、勤めていた会社を辞めて故郷に帰ることを決意しました。しかし、そこですぐに実家には戻らず、アメリカのオレゴン州に向かったのでした。
アメリカでの農業研修で偶然ホップ農家に配属
渡米した理由は、「農業研修プログラム」に参加するため。学生時代に学内の掲示板でそのプログラムを見かけたとき、参加したいと思いながら実現できず、農家を継ごうと決めた今、その時の夢を叶えるために行動したのでした。
この農業研修は、自分が専攻した業種(酪農・肉牛・養豚・養鶏・野菜・果樹など)の農場で実務的に農業を学べるもの。山家さんは最初の配属先が芋農家でしたが、激務のため腰を痛めてしまい研修先の変更を余儀なくされます。次に紹介されたのがヘーゼルナッツやニンニク、ブロッコリー、ミルクなどの酪農も行い、さらにホップも栽培している農場でした。
滞在中に地元のクラフトビールを飲む機会があった山家さん、ビールの美味しさと地域に根差した文化に興味を持つようになりました。そこでホップ栽培に携わりたいと農場長に直談判し、ホップ栽培を手伝うようになったのです。
オレゴンの師匠との絆
2018年に帰国した山家さんは、すっかりホップとクラフトビールに魅せられて、実家でブルワリーを立ち上げようと考えます。しかし資金面ですぐに実現させることが難しいと判断し、まずはホップを栽培することから始めました。この時に支援してくれたのが、オレゴンの師匠、現地で知り合った「オレゴントレイルブルワリー」のDave Willsさんです。彼とは偶然研修先で知り合い、山家さんは同ブルワリーでアルバイトをすることになります。彼はビールの醸造の指導、またホップの地下茎(地中にある茎のこと)を販売するビジネスも行っていたため、ホップについての幅広い知識を伝授してくれました。
オレゴンと十日町市では、気候・温度・湿度において違いがありますが、今までの経験と師匠が支援をしてくれたおかげでホップ栽培の事業も軌道に乗りつつあります。
現在は、カスケード、センテニアル、クリスタル、チヌーク、ハラタウ、マウントフッド、ナゲット、マグナム、ウィラメットを栽培。品質の良いホップを育てるために、地元の堆肥と自家製発酵液肥(米ぬか・野菜・果物・麹・ビール酵母・乳酸菌などを活用したもの)を使用して、栄養価の高い土壌になるよう工夫をしているそうです。
ホップの良さとクラフトビールを広めたい
山家さんは、「ホップの品質はオレゴンの方が高いですが、フレッシュホップという分野なら、日本で作る意味があります。フレッシュホップビールを通して、日本のビールの知名度を上げていくことが出来たら良いなと思っています。」と話してくれました。
昨年は、クラウドファンディングを活用して、自家製ホップを使用したフレッシュホップビールをストレンジブルーイングで醸造しました。今年も同様にできるよう準備を行っているということです。
「これからもホップの栽培を通してホップの良さとクラフトビールを広めていきたい」と夢を語ってくれた山家さんの今後の活躍が期待されます。
ホップカレンダー
DATE
【ホップ屋Hop shop 概要】
住所:新潟県 十日町市
ウェブサイト:https://hopyeah.stores.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/pg/hopyeah688/posts/
栽培品種:カスケード、センテニアル、クリスタル、チヌーク、ハラタウ、マウントフッド、ナゲット、マグナム、ウィラメット
栽培面積:7アール
購入方法:ウェブサイトをご利用ください
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