クラフトビールで横浜を盛り上げたい ―進化を続ける古川原農園と芹田果樹園のホップ栽培―
フレッシュホップ収穫の時期がやってきました。神奈川県横浜市の古川原農園(JTFファーム株式会社)と芹田果樹園、株式会社横浜ビール(以下、横浜ビール)が協力して、横浜産の生ホップを使用したビールを造る取り組みは4年目を迎えました。
栽培しているホップの種類はカスケードとセンテニアルの2種類。
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摘み取りから3時間でビール釜へ投入
今年は、カスケードの香りが溢れるビールを造りたいと収穫目標を10kg(昨年は6kg)に増量。12時から摘み取りを開始し、目標は15時までに達成すること。そこから車で横浜ビールに運び、ホップの手揉み作業を行い、18時にビール釜に投入するというスケジュールです。
収穫が行われた8月4日は最高気温が32度の真夏日。ホップの蔓(つる)には棘(とげ)があるため、長袖の衣服に軍手をはめて、マスクまで着用となると、とにかく暑い・・・始まったばかりなのに、「あ〜ビール飲みたい」という声があちこちから聞こえてきました。
品質向上のための2つの改善
古川原琢さん(古川原農園)と芹田賢治さん(芹田果樹園)は、美味しいフレッシュホップビールを地元の皆さんに飲んでもらおうとホップ栽培で2つの改善を行いました。
1つ目はホップ棚の改良です。棚の高さを昨年より上げて、日当たりと風通しを良くしました。その結果、ホップの実がひとまわり大きく成長。さらに、棚の中央にワイヤーを取り付けて、巻きついたツルの上げ下げを容易にすることで、脚立に上らず楽な姿勢で摘み取り作業ができるようになりました。
2つ目は、施肥(肥料を与えること)の見直しです。ホップに関する論文や絶版になっている技術書を探し出して、施肥量を調べ上げました。特に参考になったのが、「ホップ−多収栽培の新技術−浜口典成(農山漁村文化協会)」という技術書です。これまでも相当量の肥料をまいていましたが、さらに上回る量を与えることで成長を促進しました。結果、ホップの濃い香りが畑全体から立ち込めてくるほどに。
この日、飛び入り参加した田山智広さん(スプリングバレーブルワリー株式会社 マスターブリュワー)からは
「カスケードはこのカサカサする感じ(ホップの表面が乾燥している)がいい状態です。これを縦2つに割るとルプリンが一列に並んでいるでしょう。このルプリン同士を擦ると柑橘の香りがした後に油っぽい香りがしますが、これが良い香りの証です。ルプリンの量も香りもとてもいい感じ」とお墨付きをもらいました。
クラフトビールは地域に欠かせない大切な存在
2人が毎年改良を重ねてホップの品質を向上させたい理由は、「クラフトビールで横浜を盛り上げたい」という想いがあるから。
古川原さんは、
「クラフトビールは地域の名産品になれると思います。各地域で醸造所と農家がつながって、地元産のホップを使ったビールが造られることはとても意味があることだと思って取り組んでいます」
共に活動する横浜ビールの営業企画部長の田尻和彦さんからは、
「ホップを育てる農家さんがいて、収穫や仕込みを手伝ってくれるボランティアの方々がいる。ビールを醸す仲間と、そのビールを提供する飲食店の方々、そして飲んで、伝えてくれるお客様がいる。そういった地域ぐるみの取り組みが、我々のような醸造所を支えてくれていて、正にクラフトビールは地域に欠かせない大切な文化だと思うのです」
とそれぞれの想いを語ってくれました。
鼻腔を刺激するカスケードの香り
最後の大仕事。横浜ビールのブルワリー内で10kgのカスケードを手揉みしました。これは、ホップをちぎって指でよく揉んで、根元についているルプリンと呼ばれる黄色い樹脂のカプセルを破壊するために行います。こうすることでルプリンが内包するホップの香りと苦味を効率よくビールに取り込めるのです。
1時間半かけて作業が完了。つけていた手袋には、大量のルプリンが付着してかなりオイリーな状態に。カスケード特有の柑橘系の香りがマスクをしていても感じられるほどです。
フレッシュホップビールはいつ飲める?
生ホップを使用したビールが醸造できるのは、1年の中でもホップを収穫する数週間だけ。この時期ならではの特別な行事です。
「今年は横浜産フレッシュホップ の特徴を生かすために仕込みも工夫しました。α酸(ホップのルプリンに含まれる苦味成分となる物質)の高いセンテニアルをビタリングに使用。10kgのカスケードは、ホップの香り付けを高めるために煮沸後に麦汁を少し冷ましてから漬け込みました」
と横浜ビール醸造長の深田優さんが教えてくれました。
ホップの収穫から投入まで3時間かかっていない超スーパーフレッシュホップビール「ヨコハマI P A」。ビールの開栓は9月初旬で、樽生だけでなく、酵母入りの瓶詰めタイプも販売する予定です。
人の手によってつくられたものの背景には、つくり手が抱えている想いが込められています。今回の「ヨコハマIPA」が、それぞれの想いを反映させて、どんな香りと味わいになっているのか。ぜひご賞味ください。
*合わせて読みたい記事
昨年のホップ摘みの様子はこちら
【JTFファーム株式会社/ 古川原農園】
社名/農園名:JTFファーム株式会社/ 古川原農園
設 立:2013年4月
園 主(JTFファーム株式会社 代表取締役社長):古川原 琢
耕作地:横浜市港北区各所 耕作面積約70a
作 目:露地野菜各種、花、ホップ(カスケード・センテニアル)
*ホップの外販有(100g単位)https://anshindo-d.com/
古川原さんの野菜は以下のお店で購入することができます!
自然食品の店 http://www.shizensyoku-ff.com/
・自由ヶ丘店 毎週水、日 16時頃~
・日吉店 毎週水、日 15時頃~
・玉川高島屋店 毎週金 15時頃~
・横浜ジョイナス店 毎週月 16時頃~
・グランツリー武蔵小杉店 毎週水、日 17時頃~
【芹田果樹園概要】
耕作地:横浜市港北区高田町
ウェブサイト:なし
栽培品種:カスケード
栽培面積:直線 12㍍
購入方法:ホップの外販なし
【株式会社 横浜ビール】
設立:1994年12月15日(当初、日本地ビール事業研究所(株)としてスタート)
所在地:神奈川県横浜市中区住吉町6-68-1 横浜関内地所ビル
電話番号:045-212-9633
メールアドレス:brewery@yokohamabeer.com
WEBサイト:www.yokohamabeer.com
通販サイト:https://www.yokohamabeer.shop/
Facebook:https://www.facebook.com/yokohamabeer/
Instagram:https://www.instagram.com/yokohamabeer/
Twitter: https://twitter.com/beer_yokohama
横浜ビールは以下のお店で飲むことができます!
・横浜ビール驛の食卓(横浜本店)
神奈川県横浜市中区住吉町6-68-1 横浜関内地所ビル2F
・YOKOHAMA BEER STAND
神奈川県横浜市中区住吉町6-68-1 横浜関内地所ビル1F
・YB Shop 驛カフェ (馬車通駅アイランドタワー内)
神奈川県横浜市中区本町6-50-1-B1F」
*フレッシュホップビールの販売は9月初旬を予定しています。
詳しくは上記のWEBサイトよりご確認ください。
【Craftbeer Sloth House】
*ヨコハマIPA取り扱い予定の地元店舗
所在地:神奈川県横浜市港北区樽町2−1−20 CASA樽町101
電話番号:045ー633ー7989
メールアドレス:slothhousecraftbeer@gmail.com
営業時間:月/水/木曜日16時〜22時半、金曜日16時〜23時
土曜日12時〜23時、日曜日12時〜21時
休日:火曜日+不定休(SNSにてお知らせ)
Facebook:https://www.facebook.com/CraftbeerSlothHouse/
Instagram:https://www.instagram.com/craftbeerslothhouse/?hl=ja
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